違法ダウンロード刑罰化法案が衆院で可決

今に始まったことではないが、著作権法に関連して、違法アップロードした側のみならず、ダウンロードしたユーザの私的利用にも刑事罰を与えるという、直感的に考えれば「トンデモ法案」が衆議院で可決されてしまった。消費税増税原発再稼働問題に隠れたどさくさの間に可決されたような気もしなくはない。

違法ダウンロード刑事罰化・著作権法改正案が衆院で可決(ITmedia)
「ユーザーも声あげて」―違法ダウンロード刑事罰化問題、..

 消費税と同じく、一般市民にも広く影響を与えることだけに慎重な議論はもちろん、そもそもまさに「誰得」の法律なのだろうということである。結局、音楽業界などいわば著作権を生業としている団体にとって、違法コピーがまかり通っていてはCD/DVDの売上げが落ちるから、これを取り締まってほしいという名目なのだが、違法コピーを流通させる者だけでは効果が薄いから、末端のユーザのダウンロード、リッピングまで禁じてしまえというわけである。ある意味、ネット社会に逆行した横暴のようにさえ感じられる。ではそもそも、違法ダウンロードを取り締まればCD/DVDの売上げが伸びるようになるかといえば、もはやそうはならないだろう。音楽にしろ書籍にしろ、媒体で売れる時代ではなくなってきているのである。音楽業界やら出版業界も「流通の中抜き」が進んで淘汰されてくるため、構造不況になりつつある。それを違法ダウンロードのために不況に陥っているかのような論理は、当てつけか八つ当たりのようにしか見えない。いずれ法が施行された後でも業界の景気は回復しないことは明らかになるだろう。


 問題はそうしたある意味「反社会的法律」が及ぼす弊害である。多くの人がその懸念を示しているが、これは想像するのも嫌気がしそうである。少なくとも今後、教育の場とか公共の場に提供するものは著作権に関わるものは利用しない方がよいということになる。「そのコンテンツは違法のものではないか」というチェックが煩わしくなるからである。


 しかしこの時期に法案が通ったということは、政治家は消費税増税原発再稼働問題ばかりで、著作権法の改正案などにはほとんど関心がなかったのだろうと察せられる。どちらかといえば消費税増税反対派がこの法案に反対、慎重派であったようだ。また原発再稼働と同じく、業界団体の意向が優先されることになったというわけだろうか。