ロンドン五輪はソーシャリンピック

 「アラブの春」以降、急速に世界の活動に注目されてきたといえるSNSだが、ロンドン五輪は選手、関係者、マスコミ、観客・ファンにとっても当たり前のものとなっているようだ。それが「ソーシャリンピック」と言われるだけのものとなっている。それが良いことばかりではなく、人間関係ならではの問題も発生している。

SNS明暗 競泳日本は好評、「失言」2人追放(SANSPO.COM)

 選手もリアルタイムで情報発信できることから、試合直前、直後までの様子とともに、応援してくれている母国のファンなどと交流が可能だ。それだけにオフレコのはずの話も注目選手ならではで、すぐに公開されたり晒されたりする。一度発信、公開したものは、いくら後から削除しても、もはや後の祭りである。有名選手や関係者の失言も、個人情報や機密情報の漏えいと全く同じことになってしまう。選手や関係者などは、決してセキュリティの専門家でもなんでもない。そうなると安全のためにはSNSに近づかないことがベストだということになってしまう。少なくとも競技終了までは情報発信を控えるということになる。


 かつてメールが普及してきたとき、メールの内容についてのモラル、ネチケットなどということが言われた。ウイルスやら攻撃やらスパムの方がセキュリティ上の大きな問題になるにつれて、あまりそうした「生ぬるい」ことは強調されなくなった。SNSは今、まだそういう段階なのではないかとも思える。個人個人のモラルに頼らざるをえないシステムは、まだ社会的に成熟したものとは言えないのではないか。また当局から簡単に制約されたり検閲されてしまうことも同様である。SNSの成熟は、実は「民主主義とは何か」を根本的に問うている実験になっているのかもしれない。