ドイツでFacebookに実名ポリシーの廃止を命令

 Facebookのような世界的なSNSが普及するようになって、その社会への影響力が大きくなりつつある。エジプトの政変や国内でもデモ参加への呼びかけなどはその象徴的出来事である。それだけにその「実名主義」とプライバシー問題がぶつかり合うことになる。ドイツではついに当局から実名主義をやめるように命令が下ったという。

ドイツのプライバシー当局、フェイスブックに実名ポリシーの廃止を命令(COMPUTERWORLD)
フェイスブック、ユーザー数が10億人を突破―凋落の影なし(10.5)

 ネットが世界に広がれば、必ず各国の法律や国の事情にもぶつかる。基本的には「郷に入りては郷に従え」で、その国でサービスを維持したければその国のルールに従うしかない。所詮一企業のポリシーを国家に対して強制できるものではない。米国企業に対して、特に欧州や中国のような大国は半分反感が入り交じっている面もある。


 欧州の米国企業に対しての反感は、かつてはMicrosoft独占禁止法違反、Googleストリートビューのプライバシー問題などがある。ドイツではGmailという名称の商標がすでに存在していたからGoogle Mailに変更されているという話もある。そして今回はFacebookが槍玉に挙がっているというわけだ。SNSの特性として、仮にドイツ人だけ匿名で世界の他の国の人は実名というのもバランスが悪いというか、不平等になるようにも思える。Facebookが抗戦の構えを見せているのも、自社のポリシーだけでなくとも当然とも思える。


 とはいえ、実名主義は当初から抵抗感があったことは確かである。最近では日本でもFacebookユーザが増えたとはいえ、特に実名主義には抵抗感が強く、ネットといえば匿名が普通であるという意識が強いようである。かつてmixiでプライバシー流出した事件が記憶にあるせいもあるかもしれない。「何でも実名主義は危険」と「匿名だったら何でも許されるわけではない」の中間あたりのスタンスが、現実社会では必要とされるところではないだろうか。実名=public、匿名=privateを使い分けたいのがユーザの心理ではある。たとえばメールアドレスにしろ、仕事用はフルネームのアドレス名だったりするが、プライベートではメールアドレスからは実名や身分を推測できないようにしたりする。同じようにWebサービスに登録する際にも、プロフィールにはなるべくプライバシーに繋がるような個人情報は入力したくないものである。


 Facebookに関しては以前、実名登録していないアカウントが強制削除されるような情報もあったが、やり過ぎのように感じていた。またFacebookで友人を見つけるのは結構だが、特に拒否設定をしていないと、毎日スパムのように「○○さん、○○さんをご存知ですか?」とお友達候補の名前を送りつけてくるのも困りものである。FacebookSNSに対するポリシーはあるだろうが、ユーザにもSNSをどのような使い方をするかは一定の自由があるはずである。元々Facebookはリアルの知り合い同士がネットで連絡を取り合うための目的で開発されたものでありそこは実名で当然、というポリシーには賛同できる。しかしそれをネット上で不特定多数とお友達になるために事前に実名を晒すことには賛同できない。企業としてユーザ数を増やすには不特定多数とお友達になることを勧めるのだろうが、それは当初のポリシーとは相反することになるだろう。


 SNSは人間関係そのものが密接に関わっているだけに、どれが正解ということはないだろうが、今後どう成熟していくかを見守っていくしかないだろう。