携帯キャリア回線を利用しない無線LAN通信

 まさに人繋がりならぬスマホ繋がりの通信の仕組みである。基地局を必要としないスマホ間のリレーだけで通信可能になるという実験の成功が東北大で示されたという。

携帯回線使わず無線LANだけでメッセージをリレー 東北大..(ITmedia)

 携帯やスマホの通信がインターネットと決定的に異なるのは、キャリアのサーバーにパケットが集中することである。つまり中央集中型であり、分散型の典型であるインターネットの仕組みには反していることになる。逆に言えばパケットがキャリアに集中されるために、そこに「課金」することによって、法による認可と合わせて、限られたキャリアが携帯回線の独占を実現できてきたわけである。一方、緊急時にはパケットの集中し過ぎでキャリアのサーバーがダウンしやすくなるという「脆弱性」をはらんだものである。災害時や年始など、キャリアが一方的に回線を絞るなどは、社会的な要請に応えられていないものだろう。


 しかし基地局に頼らず、モバイル機器同士が無線でリレーしながら相手と直接通信をするという考え方は、携帯電話時代からあったはずである。ただ電波が届く範囲内に他に携帯電話を所持している人がいないと成り立たない話だったので実用化はしていなかったようだ。


 スマホ時代になると特に町中では周囲に誰もスマホを持っていない可能性は極めて低くなるので、いつでもリレー式の通信が可能な環境が整ってくることになる。PCでいえば何のことはない、ローカルのLANの中でPC同士が通信できることと同様である。スマホ自体がクライアントマシンでありルータの役割も担っているわけだ。こちらの方が本当のネットワークらしい仕組みとも思える。


 通信キャリアはいわば中央集権の王朝のような存在だが、このリレー式のネットワークはその支配が崩れ、民主主義的モバイルネットワークが実現できることを示唆している。動機は震災のときの経験(東北大のサイトは震災時にはダウンしていた)を元にした「災害に強いネットワーク」だが、それ以上に社会の中でのモバイル通信の位置づけを変えることになるだろう。