サッカー日本代表引き分けでW杯出場決定

 サッカー日本代表がオーストラリア戦で土壇場で引き分けに持込み、勝ち点でW杯出場権を獲得した。まさにヒヤヒヤの引き分けだが、強豪オーストラリア相手での決定は、やはり選手や監督の経験によるものだったろう。

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 ここ試合かの代表戦はヨルダン、ブルガリアに敗戦とふがいない試合が続き、代表チームがうまく機能していないのではないかと思わせられたが、本田が土壇場でPKを成功させ、そのムードを一掃させたようではある。少なくともこれでW杯本戦へ向けてのモチベーションが大きく高まることになる。


 現在の代表のほとんどは欧州のチームで活躍する「海外組」だが、それだけの選手が集まっても短期間のうちにはなかなかチームとしては機能しない。香川がマンチェスターUでハットトリックを達成したからといって代表で簡単に点が取れるかというと、そうもいかない。むしろマンUという強力なチームがバックだからこそ達成できたともいえるかもしれない。


 しかしここ2試合出場していなかった選手がいる。本田である。いつも強気な発言で話題となるが、チームの雰囲気を変えるリーダーシップがこの男にはあるようだ。どの選手も代表クラスでは技術的にはそれほど差がないと思われるが、リーダーシップを取れるとなると今はやはり本田しかいないようだ。土壇場のPK成功を「奇跡」と言っているが、そうとばかりは思えない。ここ一番のチャンスを引き寄せ、それを成功させるだけのオーラのようなものがこの男にはあり、それがチームの中での信頼感やリーダーシップに繋がっている気がする。並の選手なら「急にPKになったので(QPK?)」緊張のあまり外していたかもしれない。それどころかど真ん中で勝負して成功させたのである。そのへんの勝負への感性も並とは違うところだ。


 経験豊富な名将ザッケローニ監督としても初のW杯出場になるそうである。この監督は初のイタリア人監督として、気さくだがきわめて紳士的に見える。チームに負けがこんで不協和音が聞かれたりしてくると、監督の周辺や言動に批判も起きてくるものだが、就任以来この監督の悪い話や批判は聞いたことがない。本田など主力選手との信頼関係も良好のようである。称賛も批判も大きいビッグクラブを長年率いてきた経験もあるのだろうが、監督と日本の風土とが思った以上にマッチしているのかもしれない。これまでの外国人監督の中での好印象度はナンバーワンである。


 日本代表チームとしてロスタイムでの同点といえば、やはり1993年の「ドーハの悲劇」である。これは同点に追いつかれたものだが勝ち点の関係で日本代表はW杯出場を目前で逃すという「悲劇」に終わった。当時主力だったカズやラモスの運命は大きく変わり、結局2人にとってW杯出場はかなわぬ夢に終わった。当時は代表の中でもカズ、ラモスだけが突出していてリーダシップを取っている形だった。実力的にも現在のようにチーム全体がまだまだ底上げされてはいなかったこともあり、土壇場で勝ち切るだけの実力はまだなかったとも言えるかもしれない。今回の出場決定はある意味当時を乗り超えたともいえるかもしれない。


 20年前の1993年といえば、今年46歳のカズは26歳で奇しくも現在の本田と同年齡であった。ブラジルW杯には何らかのスタッフの形でブラジルには知己の多いカズを連れていってほしい。ブラジルサッカー界に最も顔の利く男として、また選手にとっても大きな精神的な支柱になってくれるだろう。