MicrosoftとOracleがクラウド事業で提携

 時代が移ろえば、昨日の敵は今日の味方か。クラウド事業でMicrosoftOracleが提携するという。Amazonクラウドへの対抗だというが、さてどうなることか。

MicrosoftとOracleがクラウド事業で提携─Amazon対抗へ(ITmedia)

 MicrosoftOracleの関係といえば、Oracleのラリー・エリソンCEOはMicrosoftが大嫌いで、かつてJavaがOSのようになるとされた500ドルコンピュータ構想の「ネットワークコンピュータ」の提唱者でもあった。いわく「Microsoftが居ない幸福な世界」が実現されるとしていた。時代が変わり、嫌いだったビル・ゲイツMicrosoftの一線から退いたこともあるかもしれないが、もはやネットの世界でのライバルはMicrosoftではないということだろう。また数年前のOracleによるSunの買収も関係しているだろう。それはJavaの本家がSunからOracleに移ったからということである。


 さて現状のクラウドサービス、はトップを行くAmazonと、それを追うGoogleMicrosoftという構図である。MicrosoftとしてはWindows Azureを実現するインフラの整備がなされ、ビスネス向け末端サービスとしてはSkyDrive上のOffice 365が公開されている。しかしAmazon EC2のようなクラウドでの開発者向けサービスは立ち遅れていると見られる。MicrosoftのサービスはあくまでWindows Server上だけのものであるからである。データベースも同様にSQL Serverだけである。


 一方、Sunを買収したOracleにはJavaを始め、ネットサービス向けの開発環境が整っている。多くはワークステーション時代に築かれたものである。ただクラウド初期の頃にはOracleは批判的だったこともあり、クラウドのインフラはに関しては持ち合わせていない。もともとOracleは大企業向けのデータベース事業が中心だったわけだから、いわばオンプレミスでよかったからである。


 そうなると両社の提携により、Microsoftクラウドの開発環境が広がり、Oracleクラウドのインフラを利用できるということになりそうである。その関係でAmazonGoogleクラウド事業に対抗していこうという目論見だろう。ただこの両社の提供するものは、OracleのデータベースやSQL Serverがそうであるように、あくまで企業向けが中心になるような気がする。


 それに対してAmazonGoogleにしても、クラウドのインフラサービスは個人から利用できる。というよりAmazonなどは個人のカード決済でしか利用料金を支払いできなといようにさえなっている。対抗するといっても、おそらくそこまでは徹底はできないだろう。それは両社とAmazonGoogleとのビジネスモデルの違いである。両社はあくまでクラウドを導入してもらってその利用料金を徴収することであろうが、Amazonなどは初めからクラウドの利用料金そのもので利益を上げようとはしていない。Amazonへのアクセスが増加することで、結果的にAmazonのコンテンツへのアクセスと購買が増加することを期待しているのだろう。もともとクラウドAmazonのシステムの「冗長度」を示しているものだった。Googleにしてもクラウドはもともと自社提供サービスのインフラだったわけだが、それを一般向けのネットサービスの拡大の1つとして、やはり基幹となる広告サービスの増収に繋がることを意図しているだろう。


 もう1つはスマホ/タブレット向けサービスのバックアップとなるクラウドの展開であろう。MicrosoftスマホではNokiaと提携し、Windows 8ベースのタブレットを展開しようとしているが、端末とOSを提供するだけでは不十分で、アプリなどの開発環境とクラウドが必要になるだろう。特にAndroidがそうであるようにアプリにはJavaが、モバイルデータの保持にもクラウドの利用が不可欠である。アプリ開発者に対しても選択肢が広がることになる。クラウド時代になると生き残れるベンダーは限られるようになるという何年か前の予想があったが、実際にクラウドインフラを所有する組織と提携することによってしか、将来は生き残れないことになりそうである。