XPサポート終了とLinuxと

 Linux啓蒙雑誌の記事だからとはいえ、いまだにWindowsLinuxをデスクトップ環境での比較で捉えようとしているところは、時代遅れの視点と言わざるをえない。Windows XPのサポート切れを機に「Linuxが普及」と思っているのだとしたら事実誤認も甚だしい。

XPサポート終了でLinuxは普及するのか(ITpro)

 ネットの視点から見れば、WindowsLinuxの比較などとっくに決着が付いている。少なくともサーバー分野ではLinuxの圧勝である。サーバーだけでなくデスクトップ分野でも、と考えること自体が時代遅れなのである。このWeb全盛時代にあって、そもそもデスクトップ環境そのものの重要性が低くなっている。せいぜいブラウザを起動する前の画面程度の認識である。それならOSを起動した段階で初めからブラウザが起動できていれば十分というChrome OSのような発想も生まれる。


 そしてクラウドスマホタブレットの時代である。ネットサービスのバックグラウンドとしてクラウドを利用している人にとっては、クラウドのOSが何であるかを意識する必要は全くないが、そこはサーバーの世界なので、Linuxがデフォルトである。Windows Serverを動かしたがる方が特殊である。スマホタブレットの世界ではAndroidiOSかといったところで、これらは元々LinuxでありUNIX(OPENSTEP、BSD)である。むしろWindows 8が、これからこの分野に食い込めるのかどうかというところだろう。つまりクラウドスマホタブレットの世界ではPCで言うところの「デスクトップ」は意味をなさないものなのである。


 さらにWindows側からすれば、実は重要なのはWindowsのOSそのものではなくて、Windowsでしか起動できないMicrosoft Officeである。もっといえばOfficeで作成されたファイルが重要なのである。これがWebの世界やスマホタブレットの世界でどう扱われるのかが課題となっているのである。逆にMicrosoftはその特殊性をもって何とかクラウドスマホタブレットの分野でもPCの時のような独占の夢を再びと期待しているのだろうか。ネットの分野でそうならなかったように、今後はOfficeの独占分野が狩場となっていくだろう。Microsoft自身がOffice 365のようなクラウドサービスを開始した以上、これはパッケージソフトウェアとしてのOfficeの終焉を意味し、かつPCのデスクトップも意味がなくなることになるだろう。なぜならデスクトップはOfficeに代表されるWindowsアプリケーションを起動するための環境だったわけだからである。


 さてWindows XPサポート終了などといったときに取り沙汰されるのは、むしろそのPCの延命のことである。自分にもXPが入っているかつての「ネットブック」があるのだが、特にHDDのXPは消去せず、現在はUSB起動のLinuxマシンとして動いている。Ubuntuのデスクトップ版が入っているのだが(サーバー版よりインストールや扱いが楽)、デスクトップとしてはほとんど使わずに(せいぜいコンソールとして「端末」を起動するくらい)、ApacheやらMySQLやらPHPやらを入れてサーバーとして利用できてしまっている。初めはUSBメモリから起動していたが、4GBや8GBではバージョンアップしているうちに容量が足らなくなったので、現在はUSB接続の古いコンパクトHDD(120GB)から起動できるようになっている。さらにはWi-Fi接続からでもサーバーとして機能できてリモートアクセスが利くのだから、Windowsに縛られているときに比べてはるかに快適になっているといってよい。確かにUbuntuなどはデスクトップにOfficeの代替となるLibreOfficeも入っていたりはするのだが、全くデスクトップは重要ではないのである。