アメリカITベンチャー企業の変化

 先週末にMicrosoftYahoo!買収提案がされた後、そのまま休日に入ってしまった。週明けから大きなニュースが飛び込んでくるかもしれない。その準備のために、わざわざ提案の公表を週末に行ったのかもしれない。Yahoo!側はその回答を週明けまでに「迅速」に行うというメディアへの対応まで含めたシナリオ通りになっているのかもしれない
 そのMicrosoftにしろYahoo!にしろ、かつては何もないところから始めたベンチャー企業だった。それが今のような大企業に成り上がる、現代のアメリカンドリームを体現してきた。ところがそうしたアメリカの文化も最近は変わってきているようだ。

グーグルとMSが目を付けた新興企業は?(@IT)

 MicrosoftYahoo!Googleといった企業が巨大化し、新しい技術が出てきても結局はこれらのいずれかに吸収されていく。大企業にとっても新規開発するよりは、アドベンテージを持つ企業を買収して投資を行う方が効率がよく、またスピードを争う開発競争や既存ユーザの囲い込みには手っ取り早いことになるのだろう。
 昔は買収までせずとも、スポンサー的に提携、資金援助をして、得られた成果を自社製品に組み込むような形が多かった。Microsoftに対するIBMGoogleに対するSunの存在はそうしたものだった。Microsoftなどはソフトウェアそのものを売るのではなく、ソフトウェアの使用権だけを売るというライセンス商法を編み出し、買収されずに大きくなったとも言えるかもしれない。


 ところが最近のようにネット関連企業も寡占化が進むと、既存企業に新興企業が挑むというより、初めから既存企業に買収されることを目的とした起業が増えているという。会社そのものが売り物のようなものである。アメリカの自由主義経済の中で、これは健全な姿といえるのかどうか。


 皮肉なことにこういう状況になったのは、オープンソースの普及と無関係でないかもしれない。アイデアのベースになるソフトウェアはいろいろなところから公開されていて入手も簡単であるから、資本がなくてもすぐに開発にとりかかることができる。しかしその成果もオープンソースで公開せざるをえないから、競合相手にもすぐに追いつかれる。個人や小グループで進めているものだと、この競争に打ち勝っていくのは資金的にも人員的にもすぐに限界になる。ならば大金で買収してくれる大企業の傘下で続けられた方がよいということになる。もっともその頃には、もともとの創業者は目的を達したということで、すでに企業からは離れるということになる。


 日本ではあまり考えられない図式である。もともとソフトウェア企業とは何か下請け企業的であるし、成り上がったIT系ベンチャー企業も、逆に既存権益を持つ企業を買収しようとして、社会的におかしなことになっている。いずれにしても寡占が定着してしまうと、また多くの問題も発生してきそうである。ネットの世界も煮詰まってきているということだろうか。