迫るOpen XMLの最終承認投票

 しばしば採り上げているMicrosoft Officeの標準フォーマットであるOpen XMLのISO標準の承認問題が、いよいよ最終局面を迎えているようだ。標準規格といえば、先日、DVDの規格争いが決着したが、これなど単に日本のメーカー同士だけの争いに過ぎず、貧乏くじを引いた購買者はとかく、あまり大勢に影響を与える問題とは思えなかった。しかし、この文書フォーマットの標準に関する決定は、各国の政府機関まで巻き込んだ、ある意味では政治問題でもある。さながら米大統領選指名争いくらいの様相である。

 ISO標準か否か、迫るOpen XMLの最終承認投票(COMPUTERWORLD.jp)

 誰もが使い慣れているはずのMicrosoft Officeの文書フォーマットが世界の標準になって当然、というのがMicrosoftの主張であろうが、それはまだネットがなかったデスクトップ時代の話である。WordがなければWord文書を読んだり編集はできない、Word文書を読みたければWordソフトのライセンスを買わなければならない。これがMicrosoftのビジネスのやり方であり、PCの世界とはそういうものだ、と皆が思わせられてきたのである。バイナリのWord文書を解析して、テキストエディタで編集できるようにするなどということは基本的に考えられなかった(考えた人もいるかもしれないが)。


 オープンソースが中心となったインターネットの世界には、もはやソフトウェアやデータのフォーマットがブラックボックスであるものはそぐわなくなった。Microsoftもオープンにしましたと、Open XMLを提案してきたが、Microsoft以外ではどこが同じフォーマットを使うのだろうか。世界中でMicrosoft Officeを使っているからといっても、前述の理由で、Microsoft Officeがないと文書が読めないから、業務上やむなく使ってきたのである。
 そして非Microsoft Office系の標準フォーマットであるすでにISO標準承認済みのODFとは別に、新しいOpen XMLフォーマットをゴリ押ししようとしている。ネット上にもデスクトップのときと同じように、ライセンスの網を被せようとしているように誰しもが思うだろう。


 直接利害がからむIBMGoogleが批判するのはともかくとして、各国の行政機関の文書の標準化にも影響するし、インターネットの中立ということにも少なからず影響する。今はGoogleの顧問のような存在になっているとはいえ、TCP/IPプロトコルの開発者であり「インターネットの父」と言われるヴィント・サーフも懸念を表明している。「文書交換の際に複数のフォーマットが生じる問題」「すでにある技術を再開発するのは無駄な労力」と、至極もっともなことを言っている。TCP/IPというシンプルなプロトコルに統一されたことが、現在のインターネットの発展に繋がったことをよく知るからであろう。


 Open XMLとODFどころか、Microsoft Officeの中だけで、2種類のフォーマットが混在しているようなものである。Office 2007のOpen XMLとそれ以前のバージョンのOffice文書形式であり、すでに業務の現場では少なからず混乱している。それを招いたのもMicrosoft自身である。「国民のため」と言いながら国民を混乱させて税金を取るような政策ばかり打ち出す、どこかの国の政治を彷彿させる。