YouTubeに米政府の公式チャンネル

 オバマ政権のWhite House 2.0がスタートしたと思ったら、それだけでなく政府機関を網羅した「米政府公式チャンネル」がYouTubeに開設された。YouTubeのステータスもここまで来たかという感がある。

YouTubeに米政府の公式チャンネル(ITmedia)
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THE U.S. GOVERMENT CHANNEL(YouTube)

 すでにYouTubeにはホワイトハウスの公式チャンネルは公開されていたので、それほど驚きはしないが、さらにNASAやFBIはじめとする米政府の主要機関のほとんどがチャンネルを持ち、そのポータルサイト的なものとしてTHE U.S. GOVERMENT CHANNELを開設している。すべての政府機関がYouTubeにチャンネルを持つこともオバマ政権の方針なのだろう。


 オバマ大統領は選挙の時から、もっともYouTubeを利用する政治家として知られていたが、ホワイトハウス入りしてからもそのままその手法を持ち込んで、さらに政府全体に広げたようである。さすがにゴア元副大統領以来のITの伝統を受け継ぐ米民主党の大統領だけに、IT戦略の伝統が生きているからといっていいのだろうか。しかしもしヒラリーが大統領だったら、ここまではならなかったようにも思える。やはりオバマ氏自身が若い大統領のこともあり、自身もスタッフもITに関しては強い関心を持ち、政権運営にも道具として積極的に活用していくという強い意志が感じられる。ブッシュ政権から引き継いだ問題が山積で気の毒なくらいだが、若さとITの力を発揮して難局を打開していくことを米国民ならずとも応援したくなる。


 対して日本では、YouTubeは初めから著作権を脅かすものとして権利者団体から忌み嫌われるものというイメージしかなかった。庶民の方は、テレビの名シーンや過去の懐かしビデオがアップロードされたものを容易に見たりできたことからYouTubeに人気が出た。それに権利者団体やテレビ局が噛みついたわけである。YouTubeP2Pの違法のファイル交換や海賊版DVDと同じような目で見られていたわけである。裏を返せば、ユーザは望んでも著作権を盾に、これまで既得権団体が提供できなかったことだといえる。日本発でないこともあり、まず批判から入るのが、この国の常道であるようだ。
 その頃米国では、すでに選挙戦で候補者と有権者とのディベートYouTubeが使われていた。長所も短所もあるだろうが、とにかく新しいツールを積極的に使ってみようとするフロンティア精神が感じられた。


 さすがにその後、YouTubeGoogleに対する見方も変わってきた。日本でも各政党のチャンネルができたりして選挙対策にも活用しだした。米国に遅れをとるまいということだろう。ようやく違法ビデオのアップロードサイトというイメージではなくなりつつある。そして米国では、その頃既に政府御用達のチャンネルにまでなっていたというスピードである。


 「インターネットは民主主義の道具である」というのは、インターネットの当初からの理想であったと思う。しかし一歩間違えれば敵視する人もいるし、犯罪者の道具にもなりうる。オバマ政権の政府機関の情報をYouTubeで公開するという方針は、その理想に近づく試みであると思いたい。