ターミネーター4の映像技術

 ターミネーター4(T4)が、6/13から公開される。その前にテレビ東京の水曜シアター(6/3)では懐かしい「ターミネーター」が放映されることもあるので、T4の内容をちょっと調べておこう。最新のCG映像技術が凄いらしいが、何に注目すればよいのだろうか

映画「ターミネーター4」--最新CGと視覚効果が実現した本物さながらの世界(CNET Japan)
「ターミネーター4」にシュワ氏出演!その出演場面が明らかに(eiga.com)
ターミネーター4 オフィシャルサイト

 もともとターミネーター」はシュワルツネッガー現知事の圧倒的な存在感で成り立っていたものだと思う。他のアクションの映画も個人的にはかなり面白くて好きなのだが、シュワ氏のニックネームが「ターミネーター」であるほどの代表作だといってよいのだろう。他の映画でも、クライマックスでは悪の組織をたった1人で「殲滅」させる痛快アクションは、まさにターミネーターといえた。


 だからシュワ氏が知事になってしまってからは、他の映画出演はもちろん、ターミネーターも終わりだろうと思われていた。もちろん年齢的な限界もある。そこにパート4の登場である。知事職にありながら映画出演は可能なのか、と誰しもが想像したと思うが、その出演場面はどうなるかもかなり話題になったようだ。

 ネタバレしてしまえば、結局は公務のため都合がつかず、ターミネーター1の若い頃の映像とのCG合成が使われるようだ。それなら回想シーンとそれほど変わらないような気もして、やはり残念ではある。知事退任後の「ターミネーター5」への出演を期待するしかないのか。いや、ひょっとすると今度はレーガン氏以来の映画俳優出身者として、大統領選に出馬することになるかもしれない。


 というわけで、今回のT4はシュワ氏演じるターミネーターなのではないし、またサラ・コナーの勇敢さでもなさそうである。したがって見所は、出演者というよりは現実にかなり近づけたCG映像技術なのかもしれない。これまでの映画のCG映像は、現実ではありえないシーンをCGによって見せてSFのシーンなどを実現してきた。いわゆるバーチャルリアリティそのままである。ところがT4のCG技術の話だと「ありえないシーン」ではなく、むしろ「ありそうなシーン」だが、現実には実現することはきわめて難しいシーンを視覚効果で作り出し、迫力ある映像を実現することのようである。だから見る側は、むしろCG合成と気が付かないで映像に見入ってしまうことになるのかもしれない。昔はむしろ荒唐無稽なCG映像を、娯楽として見て楽しんだのだろうが、そうはならないようである。本物の爆発シーンとかクラッシュのシーンは、我々は経験として生で知っているわけではない。まれに凄いシーンをリアルの映像で見てしまうと「まるで映画のシーンのような」という表現をするくらいなものである。だから「現実から離れた仮想的な映像」ではなく「現実にきわめて近づけて増幅したような迫力映像」が実現されていると見てよいのだろうか。予告編ビデオからは、どこがそのシーンかは判別できなかった。


 ターミネーター」からすでに25年だという。この間にコンピュータ技術は大きく変わった。映画の方はどうか。やはり圧倒的存在感のヒーローの出現を自分は期待してしまう。これはテレビのドラマ以上に期待するところだろう。人気テレビドラマの映画化というのは、ちょっと違う気がするのである。CG技術にしろ、ヒーローを際立たせるための効果であってほしい。
 かつて黒澤明の時代劇映画では、殺陣のシーンに初めて刀のチャリーンという効果音や斬る音、血しぶきが上がるシーンなどを取り入れた迫力ある映像を作り出した。こうした映像手法は、スピルバーグ監督などにも大きな影響を与えたことは有名なエピソードである。しかしそれらを含めた映画の演出も、三船敏郎という、特に時代劇では圧倒的存在感を示す主役がいたからこそ生きたともいえるのだろう。テレビでしばしば放映される白黒映画時代の作品を見ると、つくづくそう思える。


 というわけで、ターミネーターの映像技術は進化を続けているようだが、やはりシュワ氏はほしい。今回の主役はどうなのであろうか。