Vistaは早く捨て去るべきだが・・

 eWEEKの記事には割と極論の論調のものが多いので、ある意味わかりやすいが、それだけにツッコミもしやすい。Windows 7の市場での好評を受けて、Microsoftは早くVistaを捨てるべきと主張するものがあるのだが、事はそんなに簡単ではないだろう。好き勝手に記事へのツッコミをしてみることにする。

MicrosoftはそろそろVistaを捨てるべき(ITmedia)
Microsoftは「革新力のなさ」と「内紛」で衰退している-元幹部語る

1.企業は忘れつつある
初めからVistaを見送った企業はよいだろうが、問題はVistaを導入してしまって、いろいろとトラブルを抱えてしまっている企業である。そちらの方がMicrosoftに対しては従順な企業であるといえる。こうした企業にWindows 7を格安のアップグレードを提供するべきではないだろうか。本当にMicrosoftVistaを忘れさせようとするのなら。


2.消費者は「7」に向かっている
一般ユーザには、すでにショップでは「7」しか手に入らなくなっているのだから当然ではある。「7」に関心があるというより、Vistaよりはマシという評価だろう。せめてXP時代並の操作性に戻ってほしいと思っている。


3. 永久に代償を払うことはできない
それでもマメにVistaを導入してくれたユーザには、格安で「7」へのアップデートを提供するべきだろう。少なくともVistaを見送ったユーザよりは、はるかにMicrosoftに貢いでいるわけだから。


4. Windows 7は素晴らしいOSだ
だからそれは「Vistaに比べれば」という条件付きだろう。好んでWindowsを使っているわけでなく、ある時代からWindowsを使わざるをえなくなっているのが、世の中の現実なのだから。


5. それでもVistaは割と売れた
企業などではPCのリース期限が切れたりすると、好むと好まざるとに拘わらず、必然的にVistaに移行せざるをえなかったところも多い。その際にかなりの無駄なエネルギーをVista関連のトラブルに割かれたことだろう。「XPへのダウングレード権」付きというおかしな形式で強引にVistaの売り上げにしたことも忘れてはならない。


6. Windows 7は急速に伸びている
PC全体の売れ行きはこの不況で落ちている。表向き出荷台数が増えているのはネットブックなどの格安PCだけである。これらにプリインストールされている「7」もカウントされるから伸びているようには見えるだろう。だが本当にユーザが欲しいのはXP→7へのスムーズなアップグレードができるものである。今のままではXPマシンはLinuxに転用するしか道はない。


7. これからの問題に備えよ
クラウドであるWindows Azureと「7」との関係がどうなるかは、まだユーザには見えてこない。まさかWindowsでなければAzureにはアクセスできないということにはできないだろう。しかしMicrosoftのことだから、どこかで「7」やOfficeユーザと、そうでないユーザとの差別化をライセンスの形で行うことになるのだろう。


8. Windows XPは古くなった
8年もたっているのだから古くなったのは当然だが、XP自身よりも一緒にバンドルされてきたIE6の古さの方が、セキュリティ上でも大きな問題となっている。Vistaが不評だったためにXPが使い続けられて、それがセキュリティ上の問題も生み出すことになった。そう考えると、Vistaを忘れ去るだけでなく、XPも安楽死させなければならない。


9. ベンダーはWindows 7に満足
喜んでかどうかは知らないが、Vistaに比べれば売りやすくなったことは確かだろう。「ダウングレード権」などという苦し紛れの提案をユーザにしなくてもよいのだから。しかし利益率の低いネットブックと高いWindowsとパフォーマンスの出ないOfficeの組み合わせには、依然と苦しむかもしれない。Chrome OSが出てくると一波乱あるかどうかである。


10. 競争は激しい
OSだけ切り取って見ても仕方がないことになるだろう。背景となるクラウド、PCのシンクライアント化、モバイルやスマートフォンとの関係などで総合的に判断しなければならなくなる。かつてのようにOfficeさえ使えればよい環境とは違って、Webとクラウドにシフトしているのだから、相対的にWindowsの必要性は少なくなってきている。