電子書籍が普及しPCはトラックに

 どちらもiPadを意識してであろうインタビュー記事を採り上げよう。1つはソニー幹部の「電子書籍が5年以内に紙の本を超える」との予測、もう1つはスティーブ・ジョブズの「PCはトラックのようなものになる」である。これらはどちらも連動した話のようである。

「電子書籍は5年以内に紙の本を超える」とソニー幹部(ITmedia)
S・ジョブズ氏が語る「ポストPC時代」、Flash、グーグル..(CNET Japan)

 iPad登場前から囁かれていたように、iPadが出版を根本的に変革するのではないかということである。紙媒体は雑誌、新聞を問わず、軒並み衰退しているように見える。決して活字情報が不要になりつつあるわけではない。ネットの情報が無償だからコスト節約のためだけにそうなったとだけとも思えない。紙に印刷されたものを入手するまでの手間と時間がかかりすぎるからであろう。そして情報の速さ、量でもネットとは問題にならない。唯一、紙媒体の利点を挙げれば携帯性や書き込みができるなど、精神的な気楽さだろうか。昔ながらのモノとしての手触り感や趣といったものである。他には強いて挙げれば、本棚に飾っておくインテリア的価値だろうか。昔は装丁も含めて、百科事典などはまさにそうだった。


 そういった家具的価値のものはともかく、今現在必要とする情報を速く回転させる手段としては、ネットが当然の手段になりつつある。同じかそれ以上の情報が、膨大な量の紙を一切必要とせず、輪転機も回す必要もないし、トラックで書籍を運ぶ必要もなくなる。正にAmazonなども、トラック配送が不要になるわけだ。いきなり紙の本がなくなることはないだろうが、発行部数は次第に減少していき、電子書籍の出版が増加してくる。ただしそれはiPadのような電子書籍リーダーが、どれだけのスピードで社会に浸透してくるかにもよるだろう。もっともデジタルテレビのように、この雑誌は20XX年からは完全に電子出版に切り替わります、と宣言されれば、どうしてもその書籍を購読したければ読者としては移行せざるをえなくなる。そのとき読者が付いてくるか、また出版社は価格設定も含めて、果たしてペイできるかどうかである。電子出版の方が紙の書籍よりはコスト的には下がると、読者は期待するからである。


 さて、電子書籍が普及し、そのリーダーとなるiPadのようなデバイスが普及したとすると、現在のようなPCの需要は少なくなるだろうというのが、ジョブズの予測のようである。たとえればPCはトラックのような存在になるという。iPadのような電子書籍リーダーを兼ねるものが、一般の乗用車がというわけである。トラックを運転する人は、仕事目的とか限られた人だけというわけである。確かに現在でもデスクトップPCの需要は減り、普段のPC利用はノートPCなどで十分になっている。デスクトップPCはサーバーとかグラフィック関係の処理とか、特別な目的の利用だけになりつつある。同じようにノートPCも含めて、PC全体が特別な目的以外にしか使われなくなるだろうということである。固定電話があまり使われなくなり、携帯電話が主流になり、今度はスマートフォンになりつつある流れも同様だといえるかもしれない。