電子書籍リーダーは価格競争へ

 iPadが引き金となって書籍の出版、流通に大きな革命が起きようとしている。「本がなくなる」といえば大げさだが、多くの「読み捨て」の本などは捨てる煩わしさを考えれば、多くは電子書籍へと移行していくか、単に消え去っていく運命にあるだろう。その電子書籍普及のために前提になるのが、電子書籍リーダーであるが、続々と値下げされていくことになりそうだ。一般家庭でネット接続が当たり前になったように、一家に最低1台は電子書籍リーダーがあるのも当たり前になるかもしれない。

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 すでにそうしたサービスが試験的に始まっているように、新聞、雑誌のように毎日読むようなものは十把一絡げで電子書籍で購読可能になるだろう。ハードカバーのちょっと高かった本もハードカバーがなくなるだけ、また流通にコストがかからなくなる分だけ大分安くなることが期待される。せっかく本を買ったのに、読みたい肝心な時に見つからないということもなくなるだろう。なにしろ本棚や積ん読の中から探す必要はなく、検索だけで済むようになるからである。コンパクトなHDDで大容量のデータが保持できるようになったのと同様に、巨大な本棚もコンパクトな書籍リーダーの中に収まってしまうようになる。


 そのように既製の書籍を「読む」作業が容易になれば、次に考えられるのは自らの電子書籍による出版である。はてなでもサービスをしているようだが、ブログや日記を書きためたものを書籍化するというものがある。そうしたことも可能だろうが、電子書籍の作成とはもう少し発想が異なるような気がする。あくまで書籍化したいテーマが先にあって、それをオンライン上で企画から原稿執筆、編集、構成、そして出版、流通まですべてネット上で完結できるようになる。原稿執筆も1人で行う場合から、複数の著者がネットを通して共同執筆をすることができるだろう。編集会議などもそうである。Google DocsやOffice Web Appsを使うのでも何でもよいが、電子書籍作成のWebサービスも現れだしてきている。


 出版社や書店が最も恐れていることは、これらの企画から出版、流通まですべて著者自身が行ってしまうことである。音楽に例えるならば、ミュージシャンや作曲家がレコード会社を通さずに、自ら新曲の発表、販売までを行ってしまうようなものである。いわば流通の「中抜き」である。IT革命が言われた出した頃、ネットの直販が可能になれば、卸の中抜きが起こることはよく言われたことだが、書籍販売についてもそれがついに起ころうとしている。「本」という運搬するモノがなくなるからである。