FacebookとGoogleの論争

 GoogleFacebookの連絡先インポートをめぐっての議論が過熱している。先の記事のようにFacebookの連絡先データは、自由に他のWebサービスにはエクスポートさせないようになっている。MicrosoftYahoo!は例外で個別に契約を結んでおり、Facebookから自由にエクスポートできるが、GoogleGmailにはそれを許していない。

Facebook対グーグル-データ可搬性をめぐる議論の真の争点(CNET Japan)
Google Warns Facebook Users of "Trap" Before Data Export(ReadWriteWeb)

 Gmailからは自由にFacebookに連絡先データがインポートできるようになっていたが、Googleは規約を変更して閉鎖的なFacebookに対して自由にインポートできないようにした。Facebookはそれに対して、Gmailの連絡先データをいったんCSVファイルにダウンロードさせてから、Facebookにインポートするようにした。これに対してさらにGoogleが「遺憾」の意を示したという。ただしFacebookに言わせれば、Googleも「Orkut」で同様の制限を付けていたはずだと主張する。


 背景には両社のWebサービスでの主導権争いと駆け引きがあることは確かだが、同時に「ソーシャルデータ」と「個人情報」のWeb上での扱いをめぐって難しい問題が提示されているようだ。同じ「連絡先データ」といってもメールとSNSでは根本的に意味が異なるのではないか、という疑問である。


 SNSのデータは「友人」つながりで成立する。相手が「友人」と認めてくれれば、ようやくSNSにおける連絡先となる。ところがメールでは「友人」かどうかは関係がない。メールアドレスさえ知っている相手であれば連絡先データとなる。友人どころか、仕事上の上司であったりライバルであったりすることもある。それらのデータを一括して「友人」として登録されてしまっては、慌てることにもなりかねない。仮にその中の人もFacebookをやっていたとしても、ただちに「友人」になる関係ではないのである。


 Facebook側は、連絡先データはユーザがコントロールはできないものだとする。「友人」の連絡先リストからこちらが削除されると、相手のプロフィールは見ることができなくなるからである。メールのアドレス帳はユーザが一方的にメールアドレスを知っている人を登録して、自分だけで利用しているものであり、他人に公開するものではない。相互にに簡単にインポートできるのはよいが、その性格の違いは認識しておくべきだろう。


 そしてユーザ側からすれば、やはり連絡先データを含めた個人情報を、大手企業に渡してしまっていることを意識するべきだろう。FacebookGoogleも戦略上いろいろな主張があるだろうが、それはユーザ側の論理からは離れたところで議論されているようだ。