松井、アスレチックス入団

 朝一で松井のオークランド・アスレチックス入団の会見の様子が流れた。早くからアスレチックスが松井に関心を持っているという話があったが、ようやく正式になったかという感がする。なにしろ、岩隈とのポスティングでの交渉の不成立の件のあったアスレチックスだったから、土壇場でどうなるかわからないと思われたのである。

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 松井としてはFAになったとはいえ、昨年はヤンキース、今年はエンゼルスがそれぞれ契約を更新しない方針となったため、FAにならざるをえないところだった。FAとは一定の実績を残した選手が特別に自由に球団を選んで交渉できる「権利」であるが、実質的には日本のプロ野球でいうところの「自由契約」=解雇とたいして変わらない立場である。まして1年契約であるから、それなりの年俸の選手は1年で結果が求められる。メジャーでは契約次第でいくらでも代わりはいるということである。松井が日本に居たままだったら、よほどのことがない限り、巨人一筋で選手生活を終えていただろう。松井が何球団も渡り歩くことになるとは渡米前は考えられもしなかった。


 ところがメジャーでは何球団も渡り歩くことの方が普通のようで、1球団で終わる方が稀なケースだろう。現在で有名な選手としては、ジーターがヤンキースだけで終わるかどうかくらいだろう。特に実績のある選手の晩年は、みなFAとなってシーズンオフに流れだす。これが「FA市場」といわれるビジネスとしての対象になるようだ。その年に活躍したからといって翌年も同じチームに残ることになるわけではない。若い選手だと、より年俸面、ポジション面でステップアップできる球団と交渉することになる。年俸の高いベテランだと、球団の若返りの方針でFAにならざるをえないケースも多い。


 松井の場合はヤンキース時代の実績をもとに、ヤンキースほど資金力はないが最大限の評価をしてくれる球団を探すことになった。DHだけか外野手兼任かと、年齢的に下り坂になってくるとの評価が微妙なところだったはずである。アスレチックスはエンゼルスと同じア・リーグ西地区のチームだけに、特に昨年1年は松井との対戦が多く、よく見ていたはずである。同じようにエンゼルス、レンジャーズと在籍して、またFAになったゲレーロとの比較もあったはずである。年俸面では松井の方がお買い得ということはあったかもしれない。


 ただアスレチックスといえば、松井がヤンキース入団当時3番だったジェイソン・ジアンビは、アスレチックス出身であり、その後またアスレチックスに復帰したりしている。その代理人が松井と同じアーン・テレム氏である。アスレッチクスとテレム氏の信頼関係からすれば、松井の契約も岩隈のようなことにはならずに、比較的松井の希望が通る形でスンナリと決まったのかもしれない。ちなみにテレム氏は高橋尚成の代理人にもなり、彼のエンゼルスへの入団も決めている。


 昔でいえば20年以上前に、ホセ・カンセコ、マーク・マクガイアが在籍していた当時が全盛時代でワールドシリーズも制覇しているという。もっと昔にはミスター・オクトーバーと言われたレジー・ジャクソンヤンキースエンゼルス、アスレチックスと渡り歩いている。


 ただ今シーズンのアスレチックスは西地区2位だったとはいえ、観客動員は30球団中29位とお寒い状況ではある。日系人を中心に松井に集客効果、広告収入の効果も期待していることは当然だろう。アスレチックスは松井が少年時代に初めて見たメジャーリーグのチームだという。ともあれ、来シーズンは赤ゴジラから緑ゴジラへ変身で、ともかく気楽に打ちまくってほしい。


 ちなみに楽天はアスレチックスとは提携関係を結んでいる。だからといって、まさか現役の最後に日本球界に復帰して楽天入団ということにはならないだろうが、メジャーから解雇になった岩村と松井稼頭央が立て続けに楽天に入団しただけに、ふと頭をよぎってしまった。来年37歳といえば、恩師長嶋監督が現役を退いた年齢に松井もさしかかってきたことになる。日本人でメジャーに渡る選手が増えたとはいえ、メジャーで10年間通用する選手は、今のところ野茂、イチロー、松井しか居そうにはないので、40歳まではメジャーで活躍してほしい。