第2回将棋電王戦出場メンバー発表

 ネットを見ていたら、偶然コンピュータvsプロ棋士の第2回電王戦の記者発表がニコニコ生放送で行われていた。ついつい最後まで見てしまったので、関心のある自分として知っている範囲のことを述べてみよう。

第2回電王戦(ニコニコチャンネル)
第2回将棋電王戦でプロ棋士5人は最強コンピュータに勝てるのか?
将棋:3月に電王戦 棋士5人VSコンピューターの団体戦(毎日jp)

 第1回電王戦は日本将棋連盟会長で引退棋士米長邦雄永世棋聖が立ち上げ、今年1月に自らボンクラーズと対戦している。千日手狙いか、後手番初手「△6二玉」という「奇手」を繰り出して物議も醸しだしたが、結果は惨敗で、プロの元名人経験者が将棋ソフトに敗れるという結果になった。


 その結果を踏まえてか、第2回の今回は「現役」プロ棋士が5対5の対抗戦で、将棋ソフト側の挑戦を受けることになった。そして今日発表されたのが、下の表のような対戦カードである。


第2回 将棋電王戦
第1局 阿部光瑠四段 vs 習甦   (3/23)
第2局 佐藤慎一四段 vs ponanza (3/30)
第3局 船江恒平五段 vs ツツカナ (4/6)
第4局 塚田泰明九段 vs Puella α(4/13)
第5局 三浦弘行八段 vs GPS将棋 (4/20)


 当初は四段や五段の若手クラスばかりが出場するものと思われていたが、一番のサプライズ今期A級3位の三浦八段の登場である。その上のA級1位、2位はタイトルホルダーの羽生三冠と渡辺竜王、その上には森内名人しかいないし、この人達は今回登場する可能性はなかったわけだから、トッププロとしてはベストの人選だったともいえよう。


 若手のプロ棋士についてはあまりよく知らないが、船江五段は早くから対戦相手として決まっていただけに、将棋ソフトに対しての秘めたる対策があるのかもしれない。もう1人意外だったのは塚田九段である。ベテラン代表とでもいうべきなのか、20年以上前ならば谷川九段と並ぶ次世代の将棋界のホープだった。その人が現在の最新の将棋ソフト相手に、いかなる対策をもって対抗するのだろうか。それこそ20年以上前なら「塚田スペシャル」なる最新戦法をもって連戦連勝をしていたのだが、それも過去のものになっているはずである(もっとも後手番になったのでこれは使えない)。


 一般的にプロ側は、特定の将棋ソフトの「クセ」や「弱み」などを突く研究対策が必要なのかどうか微妙なところである。もしプロ側がまだ圧倒的に強いのならば、個々の対策は不要のはずで、日常通りに指せれば勝てるはずである。しかしすでに将棋ソフト側がプロのレベルにまで達しているのならば、人間と違ってミスをしないだけに、優勢に導くのは並大抵のことではなくなる。プロ側がそれを意識して、意図的に従来の定跡にはない「定跡外し」を序盤から行なってくるかどうかである。その極端な手が米長会長の「△6二玉」だったわけである。


 将棋ソフト側は毎年「世界コンピュータ将棋選手権」でトップの将棋ソフトが競っているが、近年は毎年優勝ソフトが異なるほど、開発競争は激烈をきわめている。今回その上位5強ソフトがプロに挑む。米長会長に勝ったボンクラーズ(現Puella α)も今年は2位だったし、2007年渡辺竜王と対戦して話題になり、将棋ソフトの進化にも大きく貢献した「ボナンザ」ですら今年は5位以内にも入れなかった。今年優勝のGPS将棋は東大・駒場の教育用PC670台のクラスターを使うというから、ソフトの性能ばかりでなく、ハードウェアの物量にも相当依存した強さを持っているようである。このGPS将棋が大将戦で三浦八段と対戦することになったから大変興味深い。個人的にはこの大将戦だけでも「コンピュータ将棋vsプロ棋士」を行う価値があると思える。コンピュータvs人間について、かまびすしく言われる中、堂々と受けて立った三浦八段には拍手を送りたい。