GoogleがJavaScript開発ツールを公開

 GoogleJavaScriptアプリ開発ツールを公開した。Web2.0からクラウド時代になって、ますますJavaScriptの重要性は増しているように見える。最近のブラウザの過熱した争いの中でも、特にJavaScriptに対するパフォーマンスが目安になっている。特に高速のChromeを有するGoogleが、特にJavaScriptへの入れ込み方が大きいようだ。

Google、JavaScriptアプリ開発ツール..(INTERNET Watch)
グーグル,JavaScriptプログラミングツールをリリース(CNET Japan)
Closure Compiler(Google Code)
グーグル、JavaScript作品を集めたサイトを開設--Chromeの高速性をアピール(3.19)

 ツールは「Closure Compiler」「Closure Library」「Closure Templates」より構成される。コンパイラと聞くと、JavaScriptインタプリタ言語ではなくなり、マシン語に変換されて実行されるのかと思ってしまいそうだが、そうではない。ユーザの書いたJavaScriptのコードを高速化できるように、よりコンパクトに変換して効率化するもののようだ。「Closure Library」は文字通り、よく使われそうな関数などの高速化ライブラリが提供されているようである。また「Closure Templates」はHTMLやJavaScriptのインターフェース部分のテンプレートであるという。


 開発する立場からすれば、JavaScriptはサーバーサイドのJavaやLL(Light Weight Languages)よりも軽く見られがちなのは、クライアントサイドの言語だったからである。昔はHTMLを学んだ後は次はJavaScriptくらいに思われていたが、それほどJavaScriptは易しいという気はしなかった。


 Ajaxが有名になって以来、JavaScriptに対する認識も変わった。Webサービスを構成する上でほとんど必須の言語になっているし(ユーザはJavaScript機能をオフにはできない)、サーバーサイドとクライアントサイドを結ぶ言語となったのである。開発する上でサーバーサイドの言語は選べるが、クライアントサイドの言語は選べない。Ajaxなどを使いこなそうとすれば、クライアントだけでなくサーバー側の知識も必要である。単にHTMLのオマケの意識だけではJavaScriptのコードは書けない。


 とはいえ、現在向かいつつあるのはJavaScriptの専門化ではなく、むしろ大衆化である。JavaScriptが初期の頃に目指していたWeb上のVisual Basicのような立場である。デスクトップアプリケーションの世界からWebサービスへと移行しつつある中で、Visual BasicからJavaScriptへというのは、まさに大きな比喩である。実際、単なる比喩ばかりでなく、OfficeではマクロはVBAだったが、非Microsoft系のWeb版OfficeではマクロはJavaScriptになっていく可能性が高い。というより、それが自然の流れであると思える。


 そうなると一般ユーザがJavaScriptをコーディングするためにもにも近づきやすいツール群が必要になってくるということだろう。Javaなどのように完全にオープンソース化されていることから、必要なものはすべてネット上から集めることができる。Visual Basicは互換性はなかったが、JavaScriptはWeb上およびブラウザ上で、すべて互換でなければならない。現在必ずしもそうはなっていないが、これは次第に改善されていくだろう。最も近いはずのChromeFirefoxでさえ、完全に互換ではないようである。そのためにもFirefox用にもツールが提供されているようである。いずれにしても、Googleが先導してJavaScriptを発展させていくという意識の表れのようである。


 ところで、これらのツールはGoogleの「20%プロジェクト」から生まれたものだそうである。そういえばGoogleなどまだなかった昔の職場である先輩から、意味は逆なのだが「仕事なんて自分の能力の20%でやるものだ」と言われたことがある。仕事の当初は20%どころか、残業も含めて100%近く時間も体も頭も拘束されているのに、無茶苦茶な話だなと思った。しかしすぐに意味がわかった。時間の問題ではない。キツイ仕事だと思っても、この程度の仕事は自分の能力の20%しか使っていないものだ、という強い意志を持たなければ切り抜けていけない、潰れてしまうのである。実際にそう思うことによって、何度となくピンチ(締め切りに間に合わない、アイデアが浮かばないなど)を切り抜けてきた。不可能と思われたことも可能にしてしまうのである。ほとんどピンチの時は「ミッション・インプッシブル」とか「俺たちに明日はない」などと笑ったものである。その20%の気持ちの余裕を持つことによって切り抜けられたのである。もっとも、さすがに今は昔の仕事に戻りたいとは思わないが。


 Googleにしても、20%の自由があるというのではないだろう。80%は時間だけ浪費する通常の退屈な仕事なのである。20%で行う仕事が、個人の能力を問われる本質的な仕事なのだろう。「個人の能力の80%は20%の仕事の部分で評価される」。これも80:20の法則だろうか?