日本HPがMultipoint Server搭載機を出荷

 Windows Multipoint Server 2010を搭載するPCが早くもHPから出荷される。最大10人が同時にログインできるWindowsということだろう。ネット環境が飛躍的に進歩して事情は異なるとはいえ、何か昔に戻ったような感がする。

1台のPCを10人が同時利用、日本HPが「MultiPoint Server」搭載機の出荷を開始(ITpro)
マイクロソフト、PC同時利用システム「Windows MultiPoint Server 2010」..(CNET Japan)

 1台のコンピュータに複数のキーボードやモニターを接続して使う。まさに「ダム端末」(dumb-terminal)である。かつてのメインフレームの利用形態であり、あるいはUNIXでも昔からある利用の仕方である。初めからマルチユーザ、マルチタスクで設計されていたUNIXはたとえユーザが1人でも管理者(root)とユーザが複数存在し、ログインして環境が分かれるのが当たり前であった。Windowsはもともとシングルユーザであったから、後から管理者(Administrator)とユーザと分けるようにはなったが、何となく中途半端なものであった。


 現在はマルチユーザが目的というより、セキュリティ上、いかにシンクライアントを実現するかという観点から、古くさくなったダム端末の発想に再び戻ってきたようである。昔は高価だったからユーザの各マシンに入出力機器しか装備できなかったのだが、今は逆に各クライアントが多機能過ぎて情報漏えいなどのセキュリティが危うくなったり、運用に負荷がかかることになってしまっている。考えてみれば昔はマルチユーザとはいってもコンピュータを使う人はずっと限られていたわけで、現在のように職場、世間一般で誰でも使うような時代になっているわけだから運用も雲泥の差がある。


 Multipoint Serverにはキーボード、マウス、モニターをUSBケーブルでHUBのようなアダプタに繋ぎこむだけでログイン可能になる。それは当然で、接続しているのはあくまで1台のPCに過ぎないからである。ややもするとクライアント側から接続設定をして、と考えがちだが、それは複数のPCのLANの設定の場合の話である。ちょっとした学校の教室とか、会議室の中のシステムとしては有効かもしれない。出席者が資料を勝手に持ち出すということも避けられる。何よりコストの節減が図れることが売りらしい。PC本体は1台だけとはいえ、モニターやキーボードはそれなりにコストがかかるが、それは他から転用可能として、一番節約できるのはWindowsのライセンス料ということだろうか。それが「上限10人」までのミソのような気もする。Microsoftは10ライセンスを1セットと考えるのが、昔から好きのようである。パフォーマンスはともかくとして、技術的には本来10ユーザという制限はないはずである。UNIX/Linuxで考えれば当然である。10万円強で10人でWindowsが使えるとすれば、目的は違うが4万円弱のネットブックを10台導入するのと比較してどうかということにもなるだろう。


 別な発想をすれば、Multipoint Serverには、iPadのような電子書籍リーダーを繋ぎ込んで使うようにすれば利用可能性が拡がるような気もする。