国内のIPv4アドレスも枯渇

 すでに世界的には割り当てが終了してしまっていたIPv4アドレスの、国内での通常割り当てもついに終了した。いわゆる「IPv4アドレスの枯渇」が国内的にも現実となったわけである。

IPv4アドレスの在庫枯渇に関して(JPNIC 4.15)
日本のIPv4アドレスが枯渇――JPNIC、通常割り振りを終了(COMPUTERWORLD.jp)
アジア太平洋のIPv4アドレスついに枯渇、国内の通常割り振りも終了(日本経済新聞)

 新規に割り当てるIPv4アドレスの在庫がなくなったからといって、「ただちにはネットの接続には影響はありません」とはいうものの、新たにサーバーを持ち、公開するためには敷居が高くなってくることは確かだろう。


 今後予想されることは、死蔵されているIPv4アドレスの再分配、再編成の問題である。一定期間のレンタルIPv4アドレスのようなことがきくかどうか。一度、取得したIPv4を返却できる制度を作るか、不動産のように売買可能にするかである。ただ、ドメイン名は単独で任意に付けられるが、IPv4アドレスは2の指数乗のブロックで配分されるだけに、あまり細かく再分配してもルーティングの効率は悪くなりそうだ。まあ、そんなことも言っていられなくなるかもしれないが。


 もう1つは、以前から掛け声だけはあるものの、遅々として普及が進んでいないIPv6アドレスへの移行の可能性である。「IPv4アドレスの枯渇」は昔からわかっていたことにも拘わらず、ここに至るまで普及できてこなかったということは、移行のためのコスト云々もあるが、そもそもIPv6アドレスの体系に問題があるからと考えざるをえない。IPv6アドレスの体系は、決してソフトウェアのようにIPv4アドレスの上位互換になってはいないのだろう。別体系のネットワークであるから、過渡的にしろ、IPv4IPv6アドレスの共存を維持していくのはかなり大変そうである。だからよほど必要に迫られない限り、実験的ネットワーク以外はあまり構築されてこなかったといえるだろう。少なくてもグローバルネットワークでIPv6が通用していない以上、せいぜいプロバイダ内部のネットワークで利用されるくらいだが、内部のネットワークならそれこそIPv4のプライベートIPアドレスで済んでしまう。かくしてIPv6の普及はジレンマに陥っていて、下手をすると無用の長物にもなりかねない。


 さてここに至って今後はどうなるのか。既存の組織はよほど急速な規模拡大をするのでなければ、すぐに影響を受けることはないだろう。問題は新規参入の企業などがスムースにサイトを持てるようになるかどうかである。これまでは独自のサーバーを所有することがステータスでもあったが、次第にサーバー運用そのもののコストやセキュリティ対策などでの負担が高くなってきた。そこでクラウドへの移行である。少なくともパブリッククラウドへの移行ならば、IPv4アドレスの心配をする必要もない。IPv4の新規割り当て終了は、一般の企業にとってはクラウド移行を加速させる要因となるかもしれない。一般の企業や個人の活動にとっては、ネットの利用に、IPアドレスの話は直接は関係のないレイヤーの話だからである。