進まない電子書籍市場

 iPadの登場によってにわかに活発になった電子書籍市場ではあるが、日本国内では予想ほど進んでいないようだ。ガラパゴス携帯と同様に、そこには日本固有の市場の事情もありそうだ。

進まない電子書籍市場に「黒船」待望論も(ITmedia)
Amazon、Kindle向け電子書籍が販売部数で紙版を超えたと発表(5.20)

 電子書籍市場に向けては、早くから国内の出版社、大手書店、ネット企業や端末メーカーがグループを組んで取り組もうとしてきたが、互いに足を引っ張り合っている形にもなりかねないようだ。それ以上に、このジャンルに押し寄せようとしているAppleAmazonGoogleに対抗できるだけの体制になっていないようだ。簡単な話、日本にはこの3社に匹敵するだけの影響力のある団体がない。グループを組んだといっても、それは既存の団体が時代が変わっても、既得権を守りたいだけのようにしか見えないからである。著作権団体と同様である。新しい市場を開拓するという意気込みが感じられるようなものではない。


 このままだと、日本の法律や出版に対する壁はあるというものの、AppleAmazonGoogleに国内市場を制圧される可能性もある。消費者もその「黒船」来航を望んでいるようであれば、なおさらである。これらは電子書籍販売だけでなく、ネット販売やWebサービスクラウドにも大きな影響を与えている存在である。電子書籍出版、販売などはその一部に飲み込まれるという構図に過ぎない。かつての紙の書籍販売で独占してきた組織が、電子書籍市場になってもその地位を防衛、維持したいだけでは、消費者にも受け入れられにくいことになるだろう。


 Amazonタブレットを発売するという話もあったが、タブレットとの相乗効果で電子書籍の普及が進行する可能性もある。国内企業もなるべくその流れに逆行することなく、著作権問題も含めて、よりオープンな形の市場の展開をしてもらいたいものだ。