電子メールに未来はない

 Webが主流になり、セキュリティの問題も大きくなってきた2000年過ぎあたりから、自分も感じていたことであるが、そのものをズバリと言ってくれたようなフレーズである。いわゆる旧態の電子メールはインターネットの中では、もはや過去のサービスとなっていくかもしれない。

「電子メールに未来はない」--米国のウェブ専門家らが指摘 (CNET Japan)

 もともと1980年代の後半に研究者だけが使えるインターネットの中心は電子メールであったというか、実質的に使えるものはそれしかなかった。パソコン通信も同様である。文字情報だけのシングルメディアの時代だった。簡単に言えば、ネット上での平文の垂れ流しであり、それで十分であったともいえる。
 Webが発明されても、インターネットブームの初期の頃は、Webの情報は眉唾のものが多く、インターネットサービスで確実なものはメールだけであるという評論家も跋扈していた。


 特に表現力の可能性のあるWebが出てきても、メールは確実なメディアという考え方には自分も疑問を持っていた。当時でも、メールのなりすまし、チェーンメール、メール爆弾といろいろ問題があったし、決してセキュリティ面にも強いとは思えなかった。しかし当時はユーザがメールを使うのに、匿名で他人を誹謗・中傷しないようにしましょう、道徳を守りましょう、くらいの注意事項しかなかったような気がする。


 そのうちにメールの添付ファイルやプレビューするだけで感染するウイルスが出現してきて、メールの信頼性が怪しくなってくる。そして現在はPOP3がダメなのは当たり前であるし、別にウイルスではなくともスパムが当たり前のようになってしまった。
 また現在は、メールという概念は、若い人中心に携帯メールに移ってしまったように思える。もちろんPCのメールは必要上使い続けてはいるが、メールで連絡を取るのは「他に手段もないから仕方がないからメールで」という場合の方が多くなった。好んで使っているわけでなく、とりあえず両者に揃った手段がない場合に多い。特に、何も考えずに大きなファイルを送りつけたがるような人には、内心では迷惑に感じることも多い。


 そしてWeb2.0以前に、メールもWebメール中心にシフトしたと思われる。昔はWebメールといえば捨てアドレスのための手段だった。今はベースはメールソフトでもWebメールも可能でなければ使う気になれない。そして完全にWebメールが主流になったのはGmailからである。複数のメールアドレスもGmailに集約するようになり、とりあえずのスパム対策も強力だからである。


 しかしメール受信側でスパム対策をしなければならないというのは、メールというネットの仕組そのものが脆弱であることを意味しているように思える。メールが長閑に使えていたのは、古き良き時代ならではだったからといえる。もちろん古いものに、いろいろとセキュリティ対策を付け加えてきたのだが、もともと脆弱なものには泥縄的な対策でしかないように見える。


 今後はメールはどうなるか。すぐになくなることはないだろうが、結局メールというものは閉じた形で1対1または1対複数で文字情報がやりとりできればよいシステムだとするならば、Webサービスの中でいくらでも代替できるものはありそうである。以前は、チャットや掲示板だった。Web2.0の中ではSNS的なものとなるだろう。ただSNS自体も変貌を遂げていくだろうから、何が標準としてメールの代替の役割をなすものとして定着するかは、まだ分からない。しかし現在のメールをバージョンアップしていくようなイメージのものではないと思えるのである。