IntelもVistaの全社的導入は見送り

 長い間、MicrosoftとCPUとOSのタッグを組んできて、Wintel連合軍といわれたIntelが、Windows Vistaについてはお膝元の全社的導入は見送ることにしたという。世の中一般の会社的には当然の判断だが、あのIntelでさえお勧めできないWindows Vistaという烙印が付きそうである。

Intel、Windows Vistaの全社的導入は見送り (ITmedia)

 PCのCPUといえばIntel、互換CPUを含めx86系プロセッサは今やスーパーコンピュータを構成するチップにも採用され、ほぼCPUの市場を独占するに至っている。ここまで牽引する原動力となったのが、MicrosoftのOSとの組み合わせであり、MS-DOSからWindowsの各バージョンまで、ほとんどセット販売であるともいえるものであった。そしてCPUのクロック数が上がったり、新プロセッサが登場するたびにOSもバージョンアップし、「新しいワインには新しい革袋を」とばかりに新しいCPUの性能を十分引き出すには新しいOSをということで、その販売を推進してきたといえる。いつしかCPUよりもOSが先行し、OSに合わせてCPUを含めたハードウェアのスペックの方がそれに対応するようになっていた。それだけOSの方がPCの主導権を握るようになったからだろう。


 ところが、以前のWindowsは少なくとも建前上は、最低環境として1世代前のCPUやハードウェアのスペックでも動作するという前提だったが、XPあたりから怪しくなり、Vistaに至ってはほぼXP時代のハードウェア環境の全面リプレースを強要する。CPUもCore 2 Duo 以上でなければ、まともなパフォーマンスは期待できないだろう。そして無理に導入したとしても、XP時代に比べて作業能率が格段に上がるかといえば、これもノーである。さらにVistaのセキュリティと称する執拗な「確認攻撃」に煩わされ、Office 2007と古いOfficeの間の互換性と操作性の違いのトラブルに悩まされるからである。これでは全社的に大量のクライアントを抱える企業にとっては堪ったものではない。一体誰のためにOSのバージョンアップとハードウェアをリプレースをする必要があるのか、ということになってしまう。Intelの一般企業としての判断は当然である。ただ、それがCPUを提供する大元の企業であるだけに衝撃は大きい。


 もはやVistaは「事故」から「敗北」に至ったことを象徴しているようなIntelの決定である。長年の盟友からも見放されたという感じである。ちょうどビル・ゲイツの引退の日のニュースというのも皮肉な話ではある。すでに無理にVistaに移行してしまった組織はともかく、未だに躊躇している組織にとっては、2010年以降とされるWindows 7に期待して現状のまま待ち続けるか(何を期待できるのかもわからないが)、Windowsを捨てる大英断を下し、OpenOffice.orgへの移行や、徐々にOSとは無関係なWeb2.0的なサービスへと移行させるきっかけとしていくかの選択しかないだろう。もちろん理想は後者と思われるが、ネット環境も含めてなかなか急には難しいところであろう。