ついにiPhone 3Gが国内でも販売

 ついに国内でもiPhoneが販売開始となった。国内の携帯事情から2世代目となるiPhone 3Gからの販売となったが、ようやく世界の流れの中に参加したともいえる。そしてそれを仕掛けたのがソフトバンクということになった。今後の携帯、IT分野への影響はどうなることだろうか。

ついにiPhoneが発売開始 表参道には1000人以上が行列(CNET Japan)
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 予想通りか、予想に反してか、販売開始が最も早いソフトバンクモバイル表参道店には1500人もの行列ができたという。中には3日前から並んでいた人のこともテレビでは紹介されていた。携帯のキャリア他社、特にドコモなどにとっては全く予想できなかったことではないだろうか。iPhoneは黒船襲来であり、ソフトバンクの広告塔になるだろうと予想したが、その通りになりそうなムードである。ソフトバンクは携帯の世界だけでなく、今の低迷する株式市場のの救世主になることの期待さえされる始末である。


 しかし、つくづくドコモの戦略のなさ、ブランドの意味がわかっていないこと、ITの歴史の知らなさも思い知らされた。たとえドコモが機能的に同じかそれ以上の携帯を自社ブランドで出していたとしても、このような熱狂を生み出すことはできなかっただろう。


 今回、徹夜してでも行列に並んだのは、どんな人たちだったか。テレビで見る限りでは、熱心なMacユーザが多かったようである。つまり今回のiPhone発売を主に盛り上げたのは、iPodユーザでもソフトバンクユーザでもなく、古くからのMacユーザだったということである。これがアップルブランドの力ということだろう。古くからPCに関わっている人間からすれば「Macユーザの逆襲」にも見える。iPhone獲得に失敗したドコモは、そのへんを見抜けなかったということだろう。孫社長に「ジョブスは天才」と言わしめる、アップルコンピュータを世に送り出して以来のブランドの底力がそこにはある。同世代の孫社長が素直にそれを認め、出血覚悟でそれに賭けたことにはおよそ想像がつく。


 自分は熱心なMacユーザではなかったが、ジョブスの動向には注目していた。特にアップルを追われた後のNeXTコンピュータでブームを作り、アップルに戻ってからその立て直しの戦略にである。Windowsに比べシェアが少ないとはいえ、MacOS XはNeXTの遺伝子を継ぐUNIX OSとしたし、iPodiPhoneの流れは、ジョブスがアップル不在の時期に失敗したNewtonを形は違えど蘇らせたと見ることもできる。紆余曲折はあったものの、これらはアップルの歴史の中では繋がってきたものと見ることができる。その一貫性がユーザに「アップルなら必ず何かをやってくれる」という期待感を抱かせてきたのだろう。それがブランド力というものだろう。税金を徴収するようにしか考えられない元親方日の丸のドコモと、たとえ多少高くてもユーザに欲しいと思わせる製品を生み出せるアップルとの大きな違いである。


 そしてソフトバンクである。携帯に参入して¥0割など強引なシェア獲得のための手法に、当初はあまり良いイメージはなかったが、価格面の他にテレビCMやホークスなどイメージ面でも上向いており、ここ半年間は新規契約者数の伸びでもトップを維持している。そこにこのiPhoneの投入である。大幅なイメージアップとともに、ドコモのシェアを減少させ、MNPソフトバンクに移る人が若い世代中心に増えてくる可能性は大きい。まだ昨秋でiPhoneの国内販売がどうなるかわからない時期に905iに買い換えた自分でさえも、iPhoneのためにソフトバンクに乗り換えようかと心が揺らぐほどである。


 これまでの話題のPCの販売開始のイベントなどは秋葉原が相場と決まっていたが、ソフトバンクモバイルがちょうど山手線の円を挟んで反対側の表参道にあったからとはいえ、場所的には何か象徴的でもある。不幸な事件もあったが、IT分野に関しては、もはや秋葉原の時代ではなくなってきたということかもしれない。