野茂引退の決断

 とうとう野茂が引退の決断をした。日本人メジャーリーガーが多くなった現在でも、野茂の存在は特別であった。怪我もあったが、39歳の最後までメジャーへの復帰を目指した姿勢には頭が下がる

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 日米通算204勝、2度のノーヒット・ノーラン達成、メジャーオールスター戦先発などの輝かしい記録もさることながら、何度挫折しても不死鳥のように蘇ってくる姿が特に印象深かった。メジャーだけで8球団、マイナーも含めれば11球団を渡り歩いたことからも、それは窺える。
 日本球界からメジャーに渡ったときもときも日米双方から歓迎されてはいなかった。それを実力1つで認めさせてきたのだから、野茂はプロ中のプロであった。また日本の枠の中だけでは納まりきれない選手であることを証明してみせたともいえる。


 野茂が、日本人選手の実力のメジャーからの信頼を勝ち取り、その後多くの日本人選手が移籍するきっかけを作ったパイオニアだということも、今では誰もが認めることとなった。「メジャーへ移籍する選手が増えたから日本のプロ野球の人気が落ちた」とはいうが、元をただせば野茂に理解を示せなかった日本プロ野球界の体質のようなものが、今日の人気低下を招いてきたともいえるのではないか。そうしたことから、歳をとってからはともかく、野茂が日本のプロ野球の指導者として戻ってくる可能性はきわめて少ないだろう。現在のメジャーに渡った世代、たとえば桑田などが日本球界の中心的存在になった頃には和解もありうるかもしれない。


 それにしてもメジャーでは45歳くらいまで現役を続けている投手もいるのだから、野茂にもなんとかあと数年メジャーで活躍してほしかったが、やはりヒジの手術などの影響で、満足がいくだけの球威は戻らなかったようだ。普通の選手ならば十分すぎる活躍だったが、野茂だからこそ、もっと活躍できる姿を見たかったのである。ノモ・マニアは、何もドジャース時代のときだけではない。多くのファンや日本人が、誇りに思って期待していたことだけは確かであろう。