Bingがシェア落とす

 登場以来、Google検索を脅かしそうな勢いだったMicrosoftのBingも、ここに来てシェアが頭打ちの状態になってきたようである。一方でGoogle検索は微増を続けている。これはどういうことを意味するのであろうか。Googleに関連するニュースが、同じ日に複数はあるので、これらにこじつけて考えてみる。

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 Bingの検索はGoogle検索よりも、なんとなく目新しさと軽快に感じられることもあってか、市場の評価は上々であったようだ。それによってBingはMSN Search時代よりもシェアを伸ばし、Googleの背筋を寒くさせるかと思われた。しかし実質的には、Bingがシェアを伸ばしたとはいえ、Googleのシェアをが減少させたわけでなく、それは主にYahoo!検索のシェアを食う形になっていた。Yahoo!との検索提携が決まっているので、近いうちにYahoo!検索は実質的にBingになるはずだから、Yahoo!+BingがBingのシェアになると見ても、よいことにしよう。Bingも検索の性能ではGoogle検索を上回っているとしよう。だが、それでもGoogle検索のシェアは減少していないのである。


 そして最初のうちはご祝儀相場だとしてシェアを伸ばしたのかもしれないが、ここに来てそれも終わりつつああるのかもしれない。Bingが優秀だとしても、なぜユーザはGoogle検索から離れないのか?それは、もはや検索だけでWebサービスが成り立っているわけではないからだろう。検索そのものは目的ではなく、必要なWebサイトやWebサービスに行き着くための手段でしかない。もともとGoogleのポリシーはいかにGoogleサイトに長く留まってもらうかではなく、目的のWebサイトをいかに早く見つけてGoogleサイトから立ち去ってもらうかというものだった。


 しかしその情勢はWeb2.0以後、やや異なってきたようである。Googleの関連サイトそのものがユーザの目的にもなってきたからである。最も大きな存在はYouTubeであろう。その意味では、Googleがあえて大金でYouTubeをその採算性に拘わらず、手に入れたことは大きなターニングポイントだったと思える。Google検索によってYouTubeに来るのではではない。まずYouTubeを見にきて、そのついでに関連する情報をGoogle検索をすることになるのだろう。Googleマップなどでも同様である。わざわざBingのページに飛ぶことはしないように思える。つまりGoogle検索はポータルサイトではなく、あくまで関連機能に過ぎなくなっている。まずiGoogleのページに行ってヘッドラインニュースを見たり、Gmailを見たりしてから何か検索する際も似たようなものだ。もちろんMSNのページやYahoo!のページから始める人もいるだろうが、GoogleWebサービスからスタートする人が圧倒的に増えたということなのだろう。だから検索のためだけにGoogle検索にわざわざ飛ぶ必要もなくなっている。自分のブログにGoogle検索窓を付けておくこともある。Google検索そのものが、むしろあまり前面に出なくなったことがシェアの安定度を示しているように思える。


 これに対してBingは新顔だけに、Bingそのものが前面に出てきてアピールするしかない。Bingが引っ張ってMicorosoftのWebサービスへと誘導する立場かもしれない。しかし案外、MicrosoftWebサービスは、デスクトップアプリほど一般には周知されていない。大容量で便利なSkyDriveさえ、あまり知っていて利用している人は少なく、結果的に自分がその宣伝をしてしまっているような場合さえあって苦笑させられる。それゆえ、検索エンジンの争いは、もはや検索エンジンの性能だけで決まるものではなさそうなのである。Microsoftがこの現状を打破する可能性があるとすれば、Office Web Appsによって、世界中に存在するOfficeユーザを一気にWindows Liveサイトに導き、そこでBingを縦横無尽に利用させることにありそうに思えるのだが、そこまで思い切ったことができるかどうかである。