AdobeがiPhoneアプリ開発打ち切りへ
iPhone販売好調の裏側では、AppleがFlash排除の態度を鮮明にしている。これに対して、とうとうAdobe側も今後のiPhoneアプリの開発を打ち切りをせざるをえなくなり、Androidへのシフトに向かうという。互いに批判合戦の何やら泥試合の様相もあるが、その真の意図はあまりはっきりしない。
Adobe、iPhone向けFlashを断念 Androidにシフトへ(ITmedia) アドビのiPhoneアプリ開発技術の打ち切りに、アップルが声明(COMPUTERWORLD.jp) AppleのFlash締め出しは「コンテンツ配信を難しくする」-Adobe経営陣が来日(CNET Japan) ジョブズ氏が語る「iPhoneがFlashをサポートしない理由」(ITmedia 3.6)
Appleやジョブズ氏に言わせれば、Flashはトラブルの多い、もはや古い技術であり、新しい携帯端末には向いていないというわけである。またFlashそのものもAdobeのプロプライエタリな技術であり、標準であるHTML5やJavaScriptなどとは違うという主張である。一方、Adobe側からすれば、Appleこそ閉鎖的なシステムを作り上げようとしているとして、今後はライバルであるAndroid向けのアプリに力を入れるとのことである。仕掛けたのはApple側であり、Adobe側は対抗上、そうせざるをえないところである。
Flashアプリは、携帯機器にとってはメモリその他で確かに負担の高いものであるかもしれない。FlashはあくまでPCにおける技術だというわけである。それにしても、今回のAppleのFlash排除は唐突過ぎる感じもする。HTML5ビデオの出現がきっかけとなっているのかもしれない。Adobeにしては、PDFで文書の標準フォーマットの地位を確立したように、YouTubeで採用されてきたFlashビデオをあらゆるデバイスの動画の標準の地位を確立したかったところである。ところがAppleは明確にこれを拒否した。これも次世代を睨んだ標準化の争いの1つだと見ることができるかもしれない。
AppleはMacintoshの時代から、ハードウェアからソフトウェアまで閉鎖的なシステムであることは、何も今に始まったことではない。ただPhotoshopをはじめとして、Macintosh発の代表的ソフトウェアを提供してきたAdobeをここに来て毛嫌いしていることが、なんとなく不思議な感じもする。これはAdobeへの一種の決別宣言のようなものなのだろうか。
開発者やユーザにとって関心があるのは、実はiPhoneそのものよりも、iPadとそれに対抗して出てくるであろうAndroidベースのタブレットPCへの影響である。これらの対抗軸の1つがFlashが動くかどうかに必然となってくる可能性もある。それにはFlashで開発された優秀なアプリケーションが存在するかどうかにかかってくるだろう。タブレットPCではiPadで先行するAppleに、AndroidタブレットPCはFlashが有効なアドバンテージとなるのか、あるいは足かせになってしまうのかどうか。