Google DocsとOfficeの併用

 基本的な発想には賛成である。Google支持とかMicrosoft支持とかには関係なく、ユーザがどうやってクラウド時代を乗り切るかということに関わってくることである。ネットブックタブレットのような安価なPCが普及してくる中で、果たして相変わらずデスクトップのOfficeを買い続けなければならないのだろうか。

「OfficeのアップグレードよりGoogle Docsの採用を」(CNET Japan)

 Google DocsMicrosoft Officeの文書としての互換性は微妙なところである。機能的にも100%Officeの代替としてGoogle Docsを使うことはできない。Officeを使用する最大の理由は公文書で使われているからである。同じように数学の論文形式でTeXが使われていれば、数学の論文を投稿する際にはTeXを使わざるをえない。ただ、多くの人にとってはその必要がないというだけのことである。


 もし完成する段階の文書ではなく、下書きの文書とか組織内部だけの文書であれば、必ずしもOfficeを使う必要もない。その場合の使う理由は単に「使い慣れているから」だけである。それもそう思い込んでいる(思い込まされている)だけかもしれない。Office 2007にバージョンアップされた頃は慣れていたはずのOfficeが、全く勝手の違うソフトに思われたはずである。あとはMicrosoft製だから、有償だからサポートがあるからという安心感からだったろうか。


 しかし、外部向けの精緻な文書を作成するだけだったら、1つの部署に1つの共有PCにだけ入れておけば十分ではないだろうか。後はGoogle Docsでラフな文書を作っておいて、内部だけだったらその文書に共有をかければいいだけの話で、わざわざ印刷してオフラインで人が運ぶ必要もないだろう。紙で読みたければ共有を受けた人が手元で印刷すればいいだけの話である。「書類をお届けに来ました」などと言うのは、過去のオフィスの長閑な風景のようなものだ。文書の体裁よりもリアルタイムで発生した文書を共有して情報が伝わるということの方が本質的であろう。印刷したものに印鑑を押して保存しておくことに意味のある文書ならば、それだけを限られたOfficeで作成、印刷しておけばよいだろう。「文書の電子化」は現在では当たり前のものになったが、今度は「文書のネット化」をもう少し推し進める必要がある。結果的にそれは従来のOfficeに依存しない文書が主流になっていくことであるような気がする。


 これまでは公文書を読むのにWordがなければ読めないなどということが当然のように受け入れられていた。しかし公文書を読むのに特定メーカーの有料ソフトがなければ読めないというのは、本来おかしな話である。最近でこそPDF文書にすればいいということになるが、PDF文書が最終目的になるならば、Officeを使う必然性はないことになる。「文書のネット化」はこうしたことからの脱却も意味する。Officeの代わりに、フリーのOpenOffice.orgを導入するという試みもあるが、いかんせんデスクトップのままである。現状では過度段階かもしれないが、Google Docsと従来のOfficeを併用するというのは、特にあまりリソースを持たない組織に取っては、現実的な利用方法であると思っている。


 Web版のOfficeではというなら、Office Web Appsでもいいのではないかとも言えるが、こちらはまだ公開されていないから、Officeとの互換性、機能制限などがまだ未知である。Google Docsはできることとできないことは、すでにはっきりしている。あとは使い方次第である。