羽生、永世七冠獲得に失敗

 まんまとやられたと羽生。永世七冠を目前にして、まさかの大ブレーキで年末の最後になって獲得に失敗してしまった。羽生相手に3連敗から奇跡的な4連勝で逆転防衛して、初の永世竜王の称号を獲得した渡辺明をむしろ称えるべきなのだろうが、今年の羽生が神がかり的な再度の七冠を目指す勢いだっただけに、なんとも残念ではある。年齢的に一回りも違う相手に初めての敗北だけに、そろそろ年齢的な問題、世代交代が言われだしても不思議ではなくなる。

渡辺竜王、4連勝で史上初の永世竜王に(SANSPO.COM)
羽生永世7冠は来年以降に持ち越し(nikkansports.com)

 それにしても羽生は七番勝負フルセットの最終局に弱い印象を受ける。深浦王位相手に王位戦でも昨年、今年と2年続けて七局目で敗れている。タイトル数は多いがギリギリの勝負に脆くなっているように見える。フルセットまで行って疲労が蓄積してくるせいだろうか。相手と違い、羽生は他のタイトル戦も掛け持ちだったりするから、どうしても勝ち続けるほど対局過多となり、疲れが出ない方が不思議なくらいだろう。それに七冠を達成した20代の頃と違って、年齢的な陰りも出てくるのだろう。今回は若い渡辺相手だっただけに、よけいに年齢のことを心配してしまう。


 羽生にとって、今年の竜王戦への道のりは長いものだった。いきなり敗者復活戦に回ることになり、1番も負けられないトーナメントをコツコツと勝ち抜き、やっと何年ぶりかで得た挑戦権で7番勝負の最後の最後で、野望が断たれた。「来年以降に持ち越し」とは簡単に言うが、竜王戦のシステムでは今度また、いつ挑戦権を得られるかはいかに羽生といえども難しいものと思わざるをえない。むしろこれがきっかけで、羽生に衰えが見られるようになってくることが心配される。

 
 さて、渡辺にとっては、がっぷり四つで羽生に最高棋戦で勝利した意味は大きい。これが世代交代のきっかけになるかどうかである。森内、佐藤、羽生といわゆる羽生世代の黄金トリオをいずれも竜王戦で撃破したわけだから、次は渡辺時代と認めざるをえないだろう。あとは伝統ある名人戦にいつ登場できるかであろう。こちらで苦戦しているだけに、いまだに評価が確定していないように思われるからである。そして羽生世代が長い間強すぎた故か、渡辺に続くライバルや若手も見当たらないところが、スター不在とも思えるところである。