横浜FCとカズがJ1に復活

 やはりカズ効果だったのだろうか。横浜FCが昨季11位からトップでJ1に昇格した。横浜FCといえばフリューゲルスが無くなった後の市民球団。資金的に苦しいながらもよくここまで来たものだ。企業スポンサーか地域密着かで揺れたJリーグでは、もっとも理念に合った球団と言えるのかもしれない。
 横浜FCはサッカーの先駆者をリスペクトしてきたから、ここまで来れたとも思える。設立の経緯からして、まず奥寺をトップに据えたことだろう。Jリーグもなく、国内ではサッカー不毛の時代、単身プロ選手としてドイツに渡った奥寺は、それだけで凄いと思えたものだ。日本人の評価などゼロに等しく、今の高原などよりはるかに苦労をして当地での地位を得たと思う。そんな奥寺だからこそ、J1のチームでどこも引き受け手がなくなったカズを獲得したのだと思う。ちょうどカズが高校中退して、単身ブラジルに渡って苦労してプロになった姿とダブる。天才は天才を知る、ということか。

 実際、カズがどれだけ実質の戦力になったかはわからないが、サッカーに賭ける姿はチームすべての選手に影響を与えたという。引退を決めた城に至っては「三浦知良という選手は今でも憧れ」だという。中田にしてもドイツW杯に本気でカズを代表に入れてくれるよう、ジーコに頼んだのだという。ところがアジア予選突破が決まり、最終戦が消化試合となり、ジーコがカズらかつての代表をリスペクトする意味で代表に呼ぼうという提案をしたとき、代表控えの選手から反対の声が上がったという。「俺たちの出番がなくなるじゃないか」と。この話を聞いたとき、こいつらはダメだな、今回のW杯では勝てないだろうと思った。にわかに強くなると、自分たちだけの力で勝ってきたようなおごりの気持ちになる。そして衰えかけてきた先駆者を低く見たがる。自分たちの方が上だと。その消化試合は結局控え選手中心の試合になったが、案の定凡戦に終わった。

 歴史の長い世界の国では違う。ブラジルなどでは先駆者は神扱いだ。ジーコ監督率いる日本と戦う前に、一流選手からしてジーコの前に最敬礼に来ていた。そういう精神だからこそ、現在の選手はその伝統を受け継ぐ責任感と集中力が生まれるのだろう。
 日本では教育にからんで、形式的な国歌・国旗への敬いばかりを強制しようとするが、そんなことより各分野での日本の先駆者の偉大さをもっと知らしめることの方が、はるかに意味のあることだろう。