パスワードは書き留めておく?

 あまり人には言えないセキュリティ上のアドバイスの記事があった。パスワードは紙に書きとめておいた方がよいという。

「パスワードは書きとめて」:アップル、Macユーザーにアドバイス

ログイン・パスワードなどを紙や付箋に書いて、壁やモニターに貼っておく上司というのは、セキュリティの基本を論ずるときの昔から笑い話の種だった。では、どうやってパスワードを覚えておくのか、というのはあまり人には相談できないことである気がする。「私はこうして自分のパスワードを管理しています」という情報そのものが、パスワード漏洩の足がかりになりかねないからだ。


 ところが近年、ネットでさまざまな会員サービスが受けられるようになり、その都度IDとパスワードが必要になる。せいぜい頭の中でパスワードを覚えていられるのは、2,3個がいいところだ。ましてや必ずしもネットに強くない一般の利用者にとって、複数のパスワードを使い分けるのは困難になってきている。
 実際、思いつきでネットで何か申し込んだのはいいが、自分で設定したパスワードを忘れてしまい、それっきりになっているものも多くある。むしろアクティブに活動している人ほど多くログインする必要もあるもので、優先度が低いものはメモを残しておく以前に、そもそも存在そのものを忘却している場合も多い。高齢化社会で、忘れっぽい高齢者のネット利用も増大する一途だから、パスワード管理のノウハウは、基本的だが重要な事柄になってくるだろう。


 それで勢い、どれもすべて同じパスワードにしてしまうか、単純なパスワードにしてしまいかねない。ある調査によると、利用されている望ましくないパスワードは、1位「123456」、2位「password」、3位以降が自分のニックネームなどの身近な言葉や数字だという。また、すべて同じパスワードだと、1つ漏洩すれば自分が利用しているすべてのサービスの不正利用やなりすましの被害に遭う可能性が生じる。またファイルなどに記述しておくと、ファイルがコピーされたり、ウイルス感染やスパイウェアから漏洩する可能性がないとは言えない。オフラインメディアにファイルを残しておくと、盗難や紛失した場合の漏洩が怖い。


 結局、手っ取り早いのはデジタルで危険なものは、オフラインかつアナログに頼るのが一番ということになる。要は紙に書いておいて保存、管理すればよいということだろう。昔は文書全体を鍵のかかるキャビネットなりに保管していたが、今はパスワードを書いた紙切れだけを管理しておくべきだということになる。銀行の通帳と印鑑をタンスの中に保管しておくのと似たようなものだ。ただし紙といっても、手帳など持ち歩くものに書いておくものはNGだろう。
 
 もっともパスワードによる認証そのものが、今の時代限界になってきていると思うが、指紋やら虹彩やらの高度な認証が一般化するのはまだまだ時間がかかる話だろう。