松坂のジャイロボール

 松坂が魔球ジャイロボールを投げるのではないかと、米国の方が騒いでいるようだ。これも60億円効果だろうか。それほどの大金をつぎ込んでまで獲得したのだから、他の投手を超越した技術があるに違いない、という期待とロマンか、あるいはマスコミの話題作りなのだろうか。なにやらネス湖ネッシーか雪男のビッグフットかとお祭り騒ぎのようで、つくづくアメリカ人はパーティやお祭りが好きな国民なのだなと思える。
 正直言って、西武時代、松坂本人と球団自体にそれほど人気があるとは思えなかったが、メジャーに法外な形で移籍したら、日本では考えられなかったほどの扱われ方になっている。真の実力が問われるシーズンはこれからとはいうものの、これだけフィーバーを起こせたのならば、客を呼べるプロ選手としての役割では、すでに成功していると言っていいかもしれない。プロレスやボクシングなどで、試合前の煽り合戦で決戦ムードを最高潮に高めることに似て見える。話が大きくなればなるほど、ファンの楽しみは増幅されていくように見える。


 さて、ジャイロボールとは何かという分析がマスコミでもいろいろ分析したり、選手、コーチへのインタビューが報じられている。日本でのもっともらしい実験の分析では、通常の直球ではバックスピンがかかりながら飛んでくるが、ジャイロボールは横回転が加わるために手元で伸びるような球になるとか、説明されていた。
 事の真意はともかく、どんな投手でも直球といっても個人差があり、ナチュラルスピンがかかったりして微妙に変化する。それは手の大きさや形の違いであったり、投げるときのモーションの違いであったり、ピッチングマシンとはかなり感触は異なるだろう。極端な話、投手の人数だけ異なる直球が存在すると言っていいのではないか。変化球ではなおさらだ。それが普通の打者には非常に打ちにくいものになっているのであれば、それはその投手固有の武器になる。


 昔から野球漫画でも、魔球というのがもっとも少年にとってはロマンがあった。有名なのは「巨人の星」の大リーグボール。その魔球の誕生が、星飛雄馬の逆境から這い上がる人生と重ねあわされていたから心を打つ作品になっていた。その大リーグボールの名は「大リーグでも通用するような球を編み出せ」という漫画の中の金田のアドバイスだと思った。今や、本当にメジャーに通用する日本人の魔球が現実化しているということになるのか。

 魔球だのと騒いで楽しむあたり、アメリカ人のベースボールファンは、まだどこか少年のような陽気さがあるのかもしれない。