斎藤先発で早稲田優勝

 東京六大学野球で、優勝まであと1勝に迫っていた早稲田大学が、早慶戦第2戦にハンカチ王子こと1年の斎藤佑樹投手の先発で勝利し、見事に優勝を決めた。第1戦は3年生エースを立てて敗れた早稲田だったが、昨年から一身に世間の注目を浴びる斎藤で優勝を決めたあたり、まるで絵に描いたような結末だった。

斎藤の力投が優勝呼んだ! 早大2季連続39度目V

 ただでさえ、1人で六大学野球に観客を呼んでいるような存在であるところに、優勝がかかる試合に先発が回ってきて、なおかつそれにきっちりと勝って、観客の期待にも最高の形で応えてみせるのだから、誰しも斎藤はそういう星の下に生まれているのではないかと思えてしまう。

 早稲田OBのソフトバンク・和田でさえ、1年生春にはベンチ入りもできなかったそうだから、斎藤は実力はもちろんだが、強運というかピンチの時にこそ真価を発揮するようなタイプであり、アマレベルを超えているようだ。


 「スポーツうるぐす」の江川さんが「斎藤投手はピンチになるほど、全方位的に周囲が見渡せるようになり、打者に対してどういう攻め方をすればよいかが瞬時に見えてくる珍しいタイプ。普通の投手はピンチになるほど周囲が見えなくなる」という言い方をしていたが、確かに常人にはない稀有な能力を持っているように思える。緊張したり力みすぎて乱れたりするのは、プロでも精神的に弱い選手にはよくあることだ。

 甲子園での活躍以来、ことさらハンカチで顔を拭くしぐさの話題ばかりが騒がれたが、マウンド上で一呼吸おく余裕がある証拠だとすれば、この間に戦況を瞬時に判断できているのかもしれない。


 ライバルとされるマー君こと楽天・田中投手も勝ち星はなかなか増えないが、やはり非凡な投球を見せており、野村監督も「彼は何かを持っている」と並みのルーキーではないことを感じ取っているようだ。こちらもオールスター戦ファン投票の中間発表ではパ・リーグ投手部門で人気トップに立っており、新人投手では松坂以来のことだそうだ。


 なにやら日本の野球の人気は、斎藤と田中の2人だけで背負ってしまっている感じがする。人気のあるはずの中堅世代の有力選手のメジャー流出が続いていることもあるが、人気面で層が薄くなってしまった日本のプロ野球が、人気再興に果たして彼らをうまく生かすことはできるのだろうか。