PRIDEがついに消滅

 PRIDEはフジテレビに突如契約を打ち切られ、その後米国の格闘技団体UFCに全権譲渡され、興行が開催されていないまま、今回また突如、UFC側の意向で事務所まで閉鎖された。これで名実ともに10年間に及んだPRIDEの興行には終止符が打たれたようだ。

「PRIDE」が消滅!運営事務所が突然閉鎖、スタッフ全員解雇(サンスポ)
PRIDE社長が突然の解散通告(日刊スポーツ)

 もともと格闘技に限らず、興行には黒い噂が付きものだが、どうもPRIDEは初めからその影があったことは事情通にはよく知られた話のようだ。当初の主催がKRSからDSEへの転換、不可解な前社長の自殺など、舞台裏はキナ臭いものだった。フジもどこかで決定的な証拠をつかんでしまったので、興行直前だったにもかかわらず、急遽打ち切りを決めたのだろう。米国UFCについては、同じ格闘技とはいっても、全く文化の違う団体である。利益にならないと判断すれば、すぐにポイするような風土なのだろう。


 今では見慣れたせいか、当たり前のように見えるが、PRIDEのような総合格闘技スタイルはかつてのプロレスのアンチテーゼのようにしてのし上がってきた。プロレスはヤオだが、PRIDEはガチで本当に強い選手が集まるので、こちらが格闘技の本物というスタンスである。その真偽はともかくとして、プロレスラーもリングも上げてこれを負かし続けることによって、PRIDEの優位さを見せ付けてきたわけだ。一方、プロレスはお約束の上、弱いということで衰退していく。


 しかしDSEは興行のやり方としては、単なるイベント会社であり格闘技団体ではない。選手もジムも持たず、PRIDEとは単にイベントの名称に過ぎない。つまりイベントごとに外部の選手と契約し、試合を作る形である。歌手や芸能人を招聘してショーを開催するのと同じである。


 昔からのプロレス団体は違って、必ず所属選手を持ち、次世代の選手も育成しながら興行も打っていく。各地を転戦するシリーズごとにゲスト的に外国人選手や他団体・フリー選手を招聘したりする。いずれにしろ、ゼニの取れるエースと将来有望な選手を抱えているかが、その団体の安定度を示していた。
 ところが不況時代とも重なったせいか、もはやこうした体制を維持できなくなった。代わってPRIDEのようなイベント型の興行が主流になった。一見人気が出て安定しているように思えたが、選手は試合ごとに他所から引っ張ってこなければならないから、契約金次第ということになる。すでにある程度ネームバリューのある選手を引き抜こうとすれば、金がかかる。またPRIDEで人気が出るようになれば、その選手の契約金もまた高騰する。フジがバックについて放映権料が入っていたときはまだよかったが、打ち切られた途端に、あっさりと金の切れ目は縁の切れ目になったことは想像に難くない。華やかなイベント演出とは裏腹に、興行の基盤になる部分は旧態のプロレス団体よりも脆かったと言えるだろう。


 実際、PRIDE初期の頃に、さんざん外国人選手を引き抜かれたHERO'Sの前田日明は、こんな悪態をついている。

前田日明氏「ざまあみろ、PRIDE」(sportsnavi)

 確かに、日本では無名だったヒクソン・グレイシーノゲイラヒョードルといった選手を発掘したのはリングス時代の前田だった。引き抜き行為だけなら昔からプロレス団体同士でもよくあることだったが、札束だけのPRIDE相手では抜き返すにしても、相手方には選手はいないのだからしようがない。まあそれにしても前田は、皮肉程度に抑えておけばよいものを、いまだに大人になっていないようだ。


 今後は、PRIDEに残っていて小川と関係のあった選手の、吉田とか藤田とかはどうするのかが、気になるところではある。桜庭はとっととHERO'Sに移籍して賢かったのか。