AdobeのソフトはWebベースに移行へ

 発表以来、まだかと待っているWebベースのAdobe Photoshopであるが、半年以上経過しているが、まだ出ないようである。その間、スクリーショットが公開されたりして期待感を煽っているかのようである。そして、今度はAdobeのすべてのソフトウェアをWebベースに移行させることを発表したようだ。

Adobe、すべてのソフトをWebベースに (ITmedia)

 講演の中でのリップサービスの面もなくはないが、デスクトップソフトをWebアプリに転換させるための技術的なことよりも、それによってAdobe自体の収益構造が転換されていくことに、Web2.0と言われている世の中の状勢変化にもよって、時間がかかりそうだということのようである。


 Officeのような汎用的なソフトウェアと異なり、Adobeはほとんどがデザイン系のソフトウェアであるだけに、これまでの感覚からすれば、リアルタイムでの共同製作ができそうだとはいうものの、各種のデザインをわざわざネット上で行う必要があるのかという素朴な疑問もなくはない。そういうソフトウェアの利用目的への適合性よりも、これまでのパッケージ製品を売るという販売スタイルからの転換を行っていきたいということなのだろう。


 オープンソースソフトウェアは初めから自由な流通を目的としているので、Webアプリケーションにすることには何の問題もない。Googleは元からパッケージ製品など存在しないので、すべてネットサービスから出発して、ネットの広告などによるビジネスモデルを確立した。しかし、Microsoftをはじめとする、従来型の商用ソフトウェアメーカーにとっては、Webアプリに移行できるかどうかは死活問題である。無償のWebアプリが人気が出れば出るほど、パッケージ製品が売れなく可能性がある。Googleのように、Webアプリにすり込ませた広告収入でパッケージ製品に代わる収益を出せるようになればよいが、失敗すると自滅行為になりかねない。Webアプリ移行に時間がかかるとは、そういうことなのだろう。


 しかし5年、10年という予想をするのはいかがなものか。誰も5年、10年前には、Webアプリが主流になっていくなどという予想をした人はいなかっただろう。だからこれから5年、10年後には、また予想もしなかったような状勢になっている可能性も高い。Adobeという企業が存在しているかさえも予想はつかない。


 ともあれ、Adobeのすべてのソフトとまではいかなくとも、PhotpshopがWeb上で無償で利用できるようになるというのは、かなり衝撃的であるとは思う。これまで高価なPhotshopに比べて、低価格で勝負してきた各種のグラフィックソフトなども、全部吹っ飛ぶ可能性さえある。1つのソフトウェアの利用に一極集中が起こり、そこに新たなビジネス展開が生まれてくるということである。もっともその先鞭を付けたのがGoogleと言えるわけではあるが。