浅田真央、フィギュア世界選手権優勝

 浅田真央が17歳でフィギュア世界選手権優勝、世界女王となった。もちろん快挙には違いないが、もはや勝って当たり前のようなポジションになっているから凄い。前回の五輪の時はジュニアの年齢の制限で出場できなかったのに、たった数年で名実ともに世界一の立場に立ったことになる。やはりこの分野では天才少女であることを、あらためて思い知らされた。

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 今回のフリーの演技での見所?は、なんといってもトリプリアクセルの踏み切りをしようとしたときの転倒である。単に尻もちをついたとかいうものでなく、横転しまま壁に激突しそうになるほどの見たこともないような失敗だった。ところがそれにもかかわらず、以後の演技で挽回し、フリーだけでは2位だったものの、総合で1位となって優勝してしまう。一番の得点源であるはずのトリプリアクセルを抜きにしても優勝できるだけの技術、表現力を身につけたことになるのだろう。あれでトリプリアクセルも成功していたら、いったいどんな点数になっていたのかという心配をするくらいである。


 日本人女子の世界選手権優勝は5人目だという。その先駆者はトリプルアクセルが代名詞だった伊藤みどりである。女子には3回転以上のジャンプは不可能と思われていた常識を覆した人である。妹弟子に当たることもあるのだろうが、やはりトリプルアクセルを受け継ぐ選手としての真央への肩入れが大きい。真央のジュニア時代には、かつての伊藤の衣装で演技したこともある。その伊藤が解説のとき、真央の演技を見て「トリプルアクセルって、こんなに簡単に飛べるものだったんですね」と言ったことがある。その困難さを最もよく知る人の言葉だけに、真央の天才ぶりをかいま見た気がした。


 その伊藤は身長が145cmしかなかった。真央がジュニア時代にトリプルアクセルを容易に飛べたのも、体の小型、軽量さもあったからではないかとの推測もできる。ところが真央も身体も成長してトリプルアクセルを飛ぶにもバランスが難しくなってきたのではないかという推測も成り立つ。まだあどけなさが目立つので、あまりそうは見えないが、すでに身長160cmを超え安藤美姫を上回っている
 つまりそれだけある身長で、トリプルアクセルを重力に逆らって優雅な姿で飛んで見せるということが、すでに前人未到の世界なのかもしれない。


 なんとなく真央は大仏様系の顔だなと思っていたのだが、偉業を成し遂げた顔や振る舞いはなにやら国宝級の弥勒菩薩のように見えた。