秋葉原通り魔事件にみる世相

 あまりに凄惨な事件で詳しいことは書く気にもなれない。テレビもよくいつも通りにワイドショー的に報道ができるものだと腹も立つ。やはり、この国はどこかでおかしくなっているように思う。インタビューされた人が「ここはイラクじゃないだろう」と叫んでいたのが耳に残った。


 アキバもかつての高度経済成長期の電気街、PCが普及してきてからのPCショップ街、そして今はオタク文化の発信源のように言われている。PCショップの街としては、地方でも家電量産店での販売、そしてパーツ類を含めたネット販売の普及によって、秋葉原の役割はあまりなくなってきている。自分も駅の乗り換えはあっても、ここ何年もアキバの街を歩いたためしがなかった。そこにこの大事件である。これをきっかけにますます秋葉原の街が衰退してくるのではないかと懸念される。


 ネットの規制や携帯電話の規制ばかりが、どんどん国会で決まってくるようである。そんなこと以前に凶悪事件を撲滅するような施策を打つことを考えようとしないだろうか。「ネットがあるから事件が起こる」ような発想しかできない政治家、役人しかいないだろうか。このような意味不明の殺人が多すぎると思えるし、犯人検挙の能力も落ちているように思える。ここでも「ネットだから捜査が困難になっている」と言いたいのだろうか。


 そして現在のような何か鬱積が積み重なって、それを「誰でもよかった」と見ず知らずの人間に対して凶行に向かわせる人間がしばしば出現していることは、やはり現代の世相と無関係ではないだろう。長い不況に対して国の借金を重ねるだけで策を打てず、リストラ、就職難が当たり前になり、いともたやすく「勝ち組」「負け組」のレッテルを貼り、国民の預金利子をゼロにして銀行だけ救い、将来に希望が持てないような派遣社員ばかりを生み出す世の中にしてきた。そして現在の原油高、物価高である。日本人は忍耐強く暴動こそ起こさないが、鬱積は深く潜行して、いつしか最近の殺人犯のような危険分子を生み出す温床となってきたように思える。こうした社会のひずみを生んできたのは政治の失敗とマスコミの悪影響が大きいと思える。