IBMスーパーコンピュータがペタFLOPSを達成

 ついにスーパーコンピュータといわれるものが、ペタFLOPS級の演算速度を達成したとのことである。IBMのスーパーコンピュータでの話のことであるが、かつてのスーパーコンピュータのイメージからはだいぶかけ離れたものになっているようだ。

米エネルギー省のIBMスーパーコンピュータ、ペタFLOPS級の持続性能を達成(ITmedia)

 先ごろ、かつてのスーパーコンピュータの雄であったCrayがIntelと技術提携するとのニュースがあったが、これらのCPUメーカーとの組み合わせでの競争もあるのかもしれない。


 さてそのスーパーコンピュータの実体とは、プレステ3用のプロセッサとAMDx86プロセッサの集合体であるようだ。簡単に言えば、プレステ3とPCを合わせて2万台並べてスーパーコンピュータを構成しているようなものである。そしてOSはRed Hat Linuxであるという。


 PCが出てきた頃は、あくまでPCはパーソナルで使うためのコンピュータなのであって、本格的なコンピュータとは、かつてのメインフレームのようにCPUからOSまでの何もかもが特別仕立ての存在であった。そしてそれらの頂点に立つ象徴といえるものがスーパーコンピュータであった。あるいはOS的にはUNIXの親玉みたいなものだった。PCはそれから見れば、何もかもオモチャのようなもののように思われていた。


 ところがこのIBMのスーパーコンピュータを見る限り、普通のゲーム機とPCに使うようなプロセッサをかき集めて作ったようにしか見えない。OSもカスタマイズされているであろうとはいえ、普通のLinuxであるようにしか見えない。これは、現在はもう完全にコンピュータなるものの主流はPCになっているということを象徴しているような出来事である。スーパーコンピュータですら例外ではない。またこれは、発想的にはPCによるグリッドコンピューティングとさほど変わるものとも思えない。時代も移り変わったものだとの実感である。とっくに「スーパーコンピューティング」の概念は、ハードウェア的にシングルプロセッサの高速化を目指すことではなくなっている。どんなものでもかき集めて、とにかく最高速が実現できればよいという考え方に変わっている。CPU1個あたりのコストが飛躍的に下がっていることも理由であろう。


 これらのことは、あることを示唆しているような気がしてならない。世界最高速とまで行かなくとも、PC用のプロセッサをいくつも集めてクラスター化して、より高速のPCを組み立てられるようになるのではないかということである。それなりのアークテクチャや技術は必要だが、なにも新製品のマルチプロセッサCPUの登場を待つまでもなく、少し古くなった複数あるいは多数のPCから、1つの高速コンピュータとして「合体」させてリニューアルさせることができるのでないかということである。それはたとえばサーバ機に転用するようなことができるかもしれない。サーバー仮想化などにも結ぶつくかもしれない。


 いずれにしても、スーパーコンピュータといわれる概念がここまで様変わりしているとは思わなかった。かつてスーパーコンピュータにある種の憧れを抱いて見学したり、一時期試用したことのある身としては、その実体イメージがまさに雲のように薄れていくような思いがする。