世界のIPトラフィックはゼタバイト級に

 IPアドレスの枯渇が懸念される中、そのIPトラフィックは2012年にはゼタバイト級になるという。ゼタと言われても全くピンと来ないが、テラバイトの1024倍がペタバイト、その1024倍がエクサバイト、そのさらに1024倍がゼタ(zetta)バイトであり270バイトだという。

世界のIPトラフィック、2012年には「ゼタバイト」級に (ITmedia)
インターネットのキャパシティ、2010年には飽和状態に―米調査(2007.11.21)

 これは2002年のIPトラフィックに比べて100倍に相当するというから、たった10年で100倍に増加することになる。言うまでもなく、これはインターネットでの動画配信と大容量のダウンロードの影響である。YouTubeの出現などが大きく貢献していることになるだろう。


 といって、ではネットワーク資源が危機的状況に陥るかといえば、必ずしもはっきりしない。もちろん国によっても事情は違うだろうが、光ファイバーの普及やルータ、スイッチなどのネットワーク機器の性能向上、ストレージ容量の増大などにより、インターネット自体がパンクすることはなさそうである。問題はネットワークの末端部分である内部ネットワークやLANになりそうである。つまり高速道路では渋滞は起こらないが、インターチェンジであるルータを抜けて一般道路に下りた途端に渋滞に巻き込まれるという可能性が高い。実は、この現象はすでに現在の内部ネットにも現れてきていることである。


 現在でもGoogleYahoo!などといったサイトに接続するのは、回線さえ確保できていればパフォーマンス的にはあまり問題が生じることはない。ところが内部ネットから接続しようとするとき、内部での認証だのプロキシなどの内部サーバを経由させると、途端にパフォーマンスが悪くなる。内部の回線が細かったりすればなおさらである。それにも拘わらず、内部ネットからの動画へのアクセスの需要も増え続けている。内部ネットに入り込んだ途端に遅くなる典型的ケースである。こうなると内部ネットから動画を見に行く行為自体を自粛せざるをえなくなる。
 またオンラインでのアップデートやWindowsの自動更新などについても、内部ネットからではクライアントの一斉更新などは対応できなくなっているケースがある。特にセキュリティがらみのパッケージの場合ではあらかじめダウンロードしておいて、内部サーバーから再配布しなければならないことになり、対応しなければならないネットワーク管理者にとっても負担になることである。


 現在のクラウドコンピューティングへの流れから見れば、これまでの内部ネットそのものが、むしろ障害になりつつあることになる。内部ネットのセキュリティが弱ければなおさらである。データは内部に置いておいた方が安心という意識も神話になりそうである。いきなり高速道路に出て外部ネットでGoogleのようなサイトに接続して、そこにバーチャルの内部ネットを作り上げた方が、パフォーマンス的にもセキュリティ的にも快適なアクセスができるということになりかねない。いや、実際そうなる方がよいのかもしれないが、それにはまたユーザの認識そのものをかなり変革する必要があるだろう。