地デジで10兆円超の経済効果?

 2011年には、強制的なテレビのデジタル放送移行の執行とも見えるが、なんとその経済効果は10兆円超であるという。ただし政府試算というところが眉唾モノであるようにも聞こえる。

地デジ「10兆円超の経済効果」 政府が試算 (ITmedia)

 国からして大赤字だという、世知辛い世の中で、ずいぶんと景気のいい話が飛び出たものである。その調子なら政府も許認可権とやらで莫大な税収が見込まれ、国の借金返済のめども立ってくるのではないかと、皮肉の1つも言いたくなるところだ。
 デジタル放送といっても、視聴者からすればテレビ番組の何かが変わるわけでもない。莫大な経済効果があると言われても、みんなしぶしぶデジタルテレビに買い替えを余儀なくされるのだから、その需要が経済刺激策になるのかくらいしか思い浮かばない。なんだかVistaへのバージョンアップみたいである。


 ところがそうではなくて、地上波デジタル放送移行によって空いたアナログ電波の周波数帯を使って、携帯、ITS、警察・消防・防災無線携帯端末向けマルチメディア放送などに、新たな転用をすることによる経済波及効果であるという。主役であるはずの地上デジタル放送ではなくて、割り当て直しをした周波数帯への期待だということになる。それは地上波デジタル移行による経済波及効果とはちょっと違うのではないかと、やや呆れてしまった。


 公的支援までしてでも地上波デジタル放送への移行を完了させてしまった方が、空いた周波数帯から得られる経済波及効果は、それを上回るだけのことを期待できるというわけだが、いつもの公共事業のように、国の甘い見通しだけでやることだけに、正に「取らぬ狸の皮算用」なのではないかと懸念してしまう。一般国民から見れば、地上波デジタルといってもアナログ放送と、本質的にテレビの内容が変わるわけでもなく、むしろ年々の視聴率の低下など先行きは暗い。テレビはあまり見ないという若者も増えている。地上波デジタル放送そのものに経済波及効果が期待できるものでなければ、わざわざ積極的に税金である公的資金まで投入する必要はないだろう。そのへんの議論をうやむやにする、空き周波数帯への経済効果期待なのではないかという気がする。