受信メールの96.5%がスパム

 増えも増えたり、4月から6月の間の受信メールの96.5%までがスパムメールだという。業務用でも約28通に1通しか必要なメールではないという。もはやメールの仕組み自体が末期的な症状といった方がよいのだろうか。そしてこうなった要因としては、スパム配信業者が増えたということでなく、ブロードバンドの普及によるボットの蔓延にありそうということである。

受信メール、業務上必要なメールは28通のうち1通だけ(CNET Japan)
「アンジェリーナ・ジョリーのヌード」で誘うスパムにご注意(ITmedia)

 何年か前には「メール全体の6割はスパム」などと、したり顔で言っていたが、それも既に古い話となったようである。しかし96.5%という数字は、裏を返せば「受信メールは95%信頼区間でスパムと信頼できる」などという、おかしな統計的保証ができてしまうことになり、このまま伸びれば99%信頼区間まで行きそうな勢いである。
 スパムフィルタを効かすとはいうものの、うっかりスパムに判断された重要メールがないかチェックする手間を考えれば、業務に深刻な悪影響を与え続けていることには変わりがない。もはやスパムが来ることは常識化されつつあり、スパムと格闘しながら業務をこなすことが普通の感覚にすらなってしまっている。しかし、どう考えてもこれは異常であり、今後とも減少させたり防ぐことができないのであれば、もはやメールシステムは死んだとみなされることになるであろう。


 一般のマルウェアと同様に、スパムもその目的が次第に変化しているようである。以前は出会い系その他の、実際のしつこい勧誘メールであった。それがフィッシングとなり、現在のスパムはボット感染そのものを狙うものが出現してらしい。これがもっとも怖いものである。うっかりURLに偽装された実行ファイルを実行してしまうと、個人用PCを知られずに乗っ取り、これがボットとなりスパム配信のメールサーバーのような道具として使われてしまうということだそうだ。95%超にもスパムが伸びた原因は、一般PCがボットネットワークの形成に寄与してしまっているという恐ろしいことになっているようだ。いったん感染してしまうとボットは検出が難しいようである。


 半分笑い話だが、アンジェリーナ・ジョリーの名前で誘うスパムがあるという。これは自分も受信した記憶がある。というか、また来るかもしれない。そのアクションがかっこよくて好きな女優なので、ついクリックしてみたくなる(笑)。ところがこれがID、パスワードを盗み出すスパイウェアだという。くわばらくわばらである。


 しかし、これではいくら企業系のメールサーバーが第3者転送を制限してセキュリティ対策を行ったところで、一般PCがボット感染しスパム配信サーバーになってしまうのだから、世の中のスパムは減らないどころか増え続けるはずである。したがってこれはメールサーバーというより、メールの仕組みそのものの終焉を意味することになってしまいそうである。96.5%という数字が、もはやまともなシステムの許容できる数値をはるかに超えてしまっているからである。遅かれ早かれ、メールが使われなくなる時代がやってくると思える。