イチロー、日米通算3000安打達成

 日本人メジャーのパイオニアが野茂なら、記録ではイチローであろうが、そのイチローが日米通算3千本安打を達成した。日米通算という数をどう捉えるかは微妙な部分もあるが、長い日本のプロ野球の歴史の中でも生涯3000本安打を達成したのは、あの「喝!」の張本勲と2人しかいないことから、いかに偉大な記録であることかがわかる。そしてこの人達が口を揃えて言うことは、この記録もイチローにとっては、単なる通過点に過ぎないということである。そしてそれは記録を達成したから賞賛しているだけでなく、イチローが若手選手時代から見抜かれていたようである。

イチロー、日米通算3000安打達成!(SANSPO.COM)
イチローに長嶋茂雄氏らからお祝いの言葉
イチロー、「張本さんの顔浮かぶ」
復刻・イチロー史上最速で1000本到達 (nikkansports.com)
復刻・イチロー2000本安打を達成

 日米通算とはいえ、日本での記録は約1300安打、メジャーでの記録が約1700安打とすでにメジャーでの記録の方が上回っている。イチローならメジャーだけで2000本、3000本の記録を達成すること、日米通算でならば、最終的にはピート・ローズの持つ通算4256安打を抜くことが目標となるだろう。もはやイチローにとっては、日本での記録の方が参考記録程度になるということである。時代や年間の試合数が違うとはいえ、張本が3000本を達成したのが39歳、イチローが34歳であることを考えれば、もしこのまま年間200安打のペースが維持できると仮定すれば、張本の年齢で4000本にも到達できる計算になる。そういう意味からも「通過点」に過ぎないということになるのだろう。


 イチローのインタビューでの言動は天才ならではの、どこか飛んでいる部分もあるが、こと本職の野球の打撃に関してはぶれるところがないし、実際あまりスランプというものがきわめて少ないように見える。しかしイチローは個人だけでなく、日本のプロ野球のレベルに誇りを持っている部分がある。WBCに参加した時もそうだし、野茂以来メジャーでそれを実証してみせている選手は多い。


 3085本安打といえば張本、864本のホームランといえば王、400勝といえば金田、というのは時代が違えばこそ達成できた記録で、現在ではありえないと思われていた記録だが、その1つが破られそうである。その張本は、マスコミなどがいつも日本のプロ野球よりもメジャーにばかりに関心がいっていることをあまりよく思っていないようだが、イチローのことは「自分の記録を抜くことができる選手」と、早くから認めていたようである。それがイチローの「張本さんの顔が浮かぶ」という言葉に表れているのだろう。大打者に言われた一言が、その後の自信に繋がっていくこともある。それが歴史や伝統の力ともいえるかもしれない。そういえば、プロ入り後のホームラン第1号は、近鉄時代の野茂から打っているのだというのも面白い。天才同士はどこかで因縁が繋がっているようだ。


 日本人選手だけでなく、早くからイチローの打撃フォームを見ただけで「この選手はメジャーでも必ず通用する」と確信を持っていた人の話も興味深い。オリックスに在籍していたブーマー、メジャー入りする前のイチローの練習を見たケン・グリフィーJr.などの当時の話が、決してお世辞ではなかったということがわかる。また多くの賞賛をする人の中で、バット職人の話も興味深い。イチローは使用するバットの数がきわめて少ないのだという。人一倍、商売道具である野球用具を大事にしていることもテレビで見たことがある。イチローだけではないだろうが、日常的な一見当たり前そうだが、プロフェッショナルとしての姿勢や見えない努力が結果に結びつく要因として大きいものだということがわかる。


 日本人メジャー選手が増えたとはいえ、イチローほどの偉業を達成できる選手は、今後ともなかなか出てこないのではないかと思える。もうしばらくはイチローの生涯記録がどこまで伸びるかを期待して見るしかないだろう。