iPhoneによるMNPへの影響

 MNPが開始された当初は、大山鳴動鼠一匹のような結果で、MNPで携帯キャリアを移行させた人は予想よりもはるかに少なかったが、iPhoneが発売してから、そのMNPにも異変が起こりつつあるようである。これが一時的なものか、今後のiPhoneの進展次第では、ますますこの傾向が進んでくることになるのだろうか。

au、MNP後初の転出超「iPhoneの影響あった」(ITmedia)

 auにとっては、数は少ないとはいえ、7月にはMNPが開始以来初めて1ヶ月間の転出超となったことで、衝撃が大きかったのだろう。時期的に見てもiPhoneの発売が直接影響していることは明らかであることをKDDIは認めたのだろう。

 ドコモをはじめ、iPhoneに対して日本国内ではそれほど影響がないのでは、と見る向きもあった。携帯の機能的には日本ではそれほど売れないだろうとか、iPhoneを購入する人も2台目の携帯として買う人が多いだろうという評価である。それはiPhoneをただ携帯の世界の中だけで考えている話ではないか、iPhoneのトレンドとはその程度のものではないだろうと思えた。ただ、ソフトバンクとの組み合わせで国内市場ではどう捉えられるかという点が、注目されるところともいえた。


 そして、少なくともここまでの結果を見れば、やはりiPhoneの影響は大きかったと言わざるをえないだろう。ユーザはソフトバンクというよりiPhoneを買ったといえる。そのためにMNPも厭わない人たちは、iPhoneを手に入れるためにあっさりとソフトバンクに乗り換えたことになる。このへんの読みがドコモにしろKDDIにしろ甘かったのだろう。iPhoneの販売権を逸したドコモの転出超が5万1100件になっていることからも、それが窺われる。ユーザはiPhone以上に従来の携帯に魅力を感じているわけではない。確かに、カメラやらおサイフやらアプリやらの装備は、既存の携帯の方がよいだろう。


 しかしそれ以上に話題的にも、新しい流れを感じさせるのがiPhoneである。例えはやや違うが、FOMAが登場した頃の段階に似ているといえるかもしれない。当初は電波の範囲は狭い、電池はもたないなど散々だったが、それでも新世代の携帯ということで売り出されたものであった。それが今はFOMAが普通の携帯になった。iPhoneFOMAの初期ほどひどいものだとは思わないが、iPhoneの機能に批判的な人からすれば同じようなものなのだろう。


 どちらかといえば、iPhoneは携帯というよりネットのモバイルのクライアントに近いと思っていたが、携帯としてもキャリアを乗り換えてまでも移行しても不思議ではないほどの魅力があるということなのだろう。これがソフトバンクがさらにドコモとauに迫るだけの力を持っていくことになるのだろうか。