Googleのこの1年

 仕事上もGoogle Appsと関わる立場にあるので、Googleの動向にはそれなりに注目していた2008年であった。1昨年のYouTube買収以来、ますます検索以外のネットのあらゆる分野に進出したのが目立った1年ではなかったかと思う。

海外ラウンドアップ2008:グーグルの大いなる野望(CNET Japan)

 広告面では年頭のDouble Clickの買収が大きいと米国では思われているようである。そして開発者向けのGoogle App Engineの公開、これはまだまだこれからであろう。Pythonしか使えず、まだ実用的なWebサービスを一般ユーザが作れる段階ではないが、来春あたりにもっとサービスの幅が大きくなると期待される。このジャンルでのライバルは先行するAmazonである。


 一般ユーザや企業向けのGoogle Appsは、単にMicrosoft Officeの代替と考えてはだめだろう。これまでのデスクトップからの業務をSaaS型に切り替えるという業務改革につながるものである。かつて1990年ごろにダウンサイジングリストラクチャリングという言葉とっとにPCでの業務へとスタイルが変わっていったが、それに似てデスクトップからネットやWebに一般業務が変わっていく契機になるものと思える。ここでのライバルはOfficeとOutlook Express的世界である。


 一般では最大の話題はChromeの投入であろうか。なぜわざわざGoogleが自らブラウザを出す必要があったのかと、誰しもが驚いたことだろう。ここでのライバルは直接的にはFirefox、間接的にIEである。

 話題になったかどうかはともかく、よくよく注意してみるとGoogleはOSから携帯、そしてクラウドに至るまでネットの全方位に向けて手を伸ばしていることがわかる。ただ失敗もある。Second Lifeに似たサービスはアバタの顔が受けなかったか?サービスを終了している。Googlマップのストリートビューは失敗ではないが、過剰サービスだったといえようか。


 そして携帯分野ではAndorid搭載GPhoneの実機の登場である。スマートフォン市場へ向けたGoogleの立場が明らかになったようである。まだ荒削りに思えるAndoroidもオープンソ−スとしてこれからであろう。ここでのライバルはiPhoneである。


 経営面では、MicrosoftYahoo!買収騒動があった。GoogleYahoo!ホワイトナイト(そんな言葉があったっけ)なりえたのか。Yahoo!Microsoftの提案を蹴るだけの強気の背景にはなりえたかもしれない。しかしGoogleとの検索広告の提携では独禁法の疑いに引っかかり頓挫した。Googleには直接的な損害はないが、結果Yahoo!は一人負けした感じである。Yahoo!はすでに検索分野のライバルではなく、Google検索広告では独占を達成していることを明瞭にした一件であった。


 さて年末の金融危機の影響はGoogleも例外ではないだろう。大手企業が大不況になれば、その下の中小の企業も不況となり、経費節減は避けられない。広告1つの単価は知れたものの、広告料の削減はGoogleに出す広告の数の減少として現れるだろう。独占とはいえ、それはGoogleの広告収益も直接的に減少することになりかえない。新規広告の伸びと既存広告の減少とのバランスがどうなるかである。Yahoo!あたりは明らかな減益となって現れている。


 来年の見通しだが、経済がすぐに好転するとは思えないが、米国は気分的にはObama新政権に救世主的なムードを期待するだろう。そして不況であるほど経費がかからずに新規事業の始めやすいクラウドが加速していく可能性がある。その1つの手がかりがGoogle App Engineの本格化であると期待するのだが、どうなることか。