デスクトップPCの時代は終わるか

 2008年は初めてノートPCがデスクトップPCを出荷台数、売り上げともに初めて抜いた年となったようだ。これは歴史的にデスクトップPCの終焉の始まりということになるのだろうか。

デスクトップPCの時代は終わるのか (ITmedia)
第3四半期の世界ノートPC出荷台数、前年同期比40%増(2008.12.24)

 ノートPCがデスクトップPCを抜いた要因は多くの条件が重なっておきたことのように思える。2008年に限ってみれば、やはりミニノートPC(ネットブック)の登場が大きいだろう。もともと国内ではスペースが狭いということもあり、モバイル性よりも省スペースにもなるノートPCの人気は高かった。価格がはるかに安いネットブックの登場は、この人気にさらに拍車をかけたともいえそうだ。不況と金融危機が重なって、背に腹は代えられない価格面では大きなインパクトを与えた。ネットブックもますます進化していくから、この流れは当分続くだろう。


 背景にあるのはWeb2.0の進展とセキュリティ意識の高まりであろう。ネットに接続してネットサービスを前提としながらPCを利用するというスタイルが定着したことにより、ハード、ソフトともに何もかもPCに重装備する必要がなくなった。モバイルで持ち歩いても、どこにいても同じように利用することができるようになった。昔はメール1つでも内部からと外部からでは悩んだものである。ネットサービスを前提にすることは、セキュリティ面ではデスクトップPCのシンクライアントを進めることになった。デスクトップPCにはストレージはじめ余分な装備はいらないということになった。これはデスクトップPCの持つ「拡張性」が不要だということになる。であれば、かつてのように将来的な拡張性を期待してデスクトップPCを導入する必要もなくなった。機器の接続にしても、USB接続の普及で外部機器の接続が容易になり、ノートPCとデスクトップPCでの接続に差がなくなったことも大きいだろう。


 デスクトップPCとノートPCの差がなくなってきた元を辿ってみれば、こうなった要因としてはデスクトップでの液晶モニターの登場が大きい。自分も液晶モニターには登場時の早くから飛びついた方で、組織の中でもいち早く導入を提案した方だった。まだCRTモニターの方が画質が良い、価格が安い、画面が大きくて見やすい、と言われていたWindows95時代の話である。まだ液晶テレビも出ていなかった。「省スペースになる」「目にもやさしい」「電磁波の問題がない」「今後は液晶の方が主流になる」などと主張した覚えがある。その後、あっというまに液晶の時代になった。ブラウン管型はテレビでもPCでも見かけなくなった。同じ液晶であれば、問題は画面の大きさの違いだけということになる。


 ではこの先、デスクトップPCはどうなっていくか。ここからは予想だが、大きな画面が欲しいというのならば、デスクトップPCが一般家庭に浸透するには、液晶テレビとの融合が考えられるだろう。もともと液晶モニターと液晶テレビにはそんなに大きな差はないはずである。すでに液晶テレビとPCの一体型のテレビまで出ている。しかしテレビの性能はともかく、むしろPCのスペックが将来的にも固定されるのは現実的ではない。液晶テレビからは画面だけ借りればよいのだから、テレビの下か横にいわばPCデッキ?のようにデスクトップPCがあり、切り替えればPCの画面が大写しになるようなものでよいだろう。かなり画面は大きいから居間のこたつの上などで無線方式のキーボートとマウスを操作することができる。テレビでのリモコン操作がキーボードとマウスで可能になるだけである。もともとPC用の液晶モニターと液晶テレビが別々にあることが無駄に思えるからである。2011年には半強制的にすべての家庭でテレビが代わるわけだからなおさらである。すでにPCでテレビを見ることが可能になっているわけだから、これはテレビでPCを使うという逆パターンと見ることもできる。