Googleブック検索への反発強まる

 Googleサービスの1つとして定着している、Googleブック検索著作権の訴訟問題の和解案を巡り、多くの議論を呼んでいるが、Googleの直接のライバル達も和解案に反対の声を挙げはじめた。

米グーグルの書籍検索、反発強まる 独走、けん制の動き(NIKKEI NET)
MicrosoftとYahoo!、Googleブック検索めぐる和解に反対(ITmedia)
「版権レジストリは、いわば世界規模のJASRAC」-Googleブック検索問題の本質(CNET 5.12)

 電話に関連したGoogle Voiceのように、現状では米国内だけのサービスの問題にも見えるが、著作権とネットによる電子書籍の流通の問題だけに、いつ国内の問題として飛び火してきても不思議ではないようだ。出版社や著作権団体などの多くが敏感に賛否の反応を示している。


 Google以外のネット企業としては立場は単純で、電子書籍市場は広大だと見ておりGoogleの独占許すまじ」という思惑だけである。著作権問題は口実にしているだけのようにも見える。Amazonが反対するのはともかく、Microsoftはこの問題では直接関係はないだろうとも思える。


 著作権問題としては利害がからむ立場や思惑の違いから百家鳴騒の状態で、まともに考えるのは頭が痛くなりそうなのでやめるが、人間の文化的なメリットを挙げれば、すでに絶版となってしまった過去の本も電子書籍として復活させることができるということになる。いわばセピア色をしたネガもない過去の1枚の写真から、デジタル写真として蘇るのと同様である。これまでは、どうしても手に入れたい絶版本といえば古書店を回ったり、あるかないかわからない復刻版の発売を待つより仕方がなかった(Yahoo!オークションもあるか)。しかし電子書籍として日の目を見れば、ほぼ半永久的に復刻できることになる。


 電子書籍といっても「青空文庫」のように紙の書籍からデジタル文字に変換してというものでなく、書籍をスキャンしたものを「見たままに」提供するものだから「立ち読み」感覚であり、古い本ほどむしろ趣きがあることになる。ただ、本のコピーやスキャン=違法コピーという感覚があるので、初めてGoogleブック検索を見たときには「えっ、こんなに見せてしまっていいの?」という印象を持つことは確かである。もう一度見たかった動画のシーンをYouTubeで見てしまったときと似た感覚である。


 Google検索のキャッシュが違法コピーではないかという問題に始まり、YouTube著作権問題、最近ではストリートビューのプライバシー問題など、そうした部分だけを切り取ってみれば、何だかGoogleは社会的にもとんでもない企業だという印象を持たれてしまいそうだが、ネットが社会の至る所に与える影響力が大きくなってきた結果が、Googleの先鋭的な試みに不安と拒絶を覚えさせるのかもしれない。往々にして社会が受け入れて落ち着いてくると、あの頃に問題としていたのは何だったのかということにもなるかもしれない。