サーバー市場が2009年に初めてマイナスに

 景気後退の影響によるIT予算削減の中で、これまで順調に推移してきたx86サーバー市場が、2009年に初めてマイナスに転じるという。出荷金額で前年比16.3%減、また出荷台数で12.5%減の49万8,800台と50万台を割り込むという。

国内x86サーバ市場、2009年は前年に続きマイナス成長へ(COMPUTERWORLD.jp)

 IT関連に限らず、あらゆる分野で史上最悪を実績が出ているから、ことサーバー分野だけに限っても特に驚くには当たらないが、注意するべきは、サーバーはある程度やりくりが利くということであるから、ネット分野が停滞しているということには必ずしもならない


 何か新規事業を行うごとに、新規にサーバーやPCを多く導入するわけではない。クライアントPCはリース期限が決まっていて、新機種に代わったとしてもリース料は契約更新料くらいでほとんど変わりはないから、増減にはあまり影響しない。
 サーバーもリースなら同様だが、目的によっては買取になっているものもある。予算が限られている場合、買取マシンで古くなったものをサーバーに転用するということはありうる。問題はパフォーマンスだが、複数のサーバーで負荷分散をすることは、ある程度の技術があれば行うことはできる。少なくとも内部的な目的、実験的な段階(パフォーマンスを必要としない)では、旧マシンをサーバーにしても特に支障はない。もともとWindows Serverが入っていたサーバーでも、Linuxサーバーへ転用して延命させることが可能である。


 売り上げや出荷台数が落ちたといっても、世の中のサーバーの数が少なくなったわけではない。むしろ2009年にも伸びていることだろう。IT予算削減のため、新機種サーバーの導入を見送って現状維持にしたか、転用したかである。同じ部署の中だけで転用(お下がりみたいなもの)はそれほど期待できないが、組織全体でこうした「リサイクル」を広げれば、まだまだやりくりのしようがある。ネットの分野は高価なハードウェアと有料のソフトウェアを買ったからといって成功するものではない。それらはプロジェクトがほぼ完了して、サービスを公開できる時点に始めて導入しても遅くはない。ITの予算といっても、いまだにモノを新たに購入することばかりを捉えているところも往々にしてある。モノがその場にあるというのが、経理上、管理上処理しやすいからであろう。


 しかし、もはやPCを何台購入しました、Windows関連のソフトを何ライセンス買いました、という時代ではなくなるだろう。中小やベンチャー企業系や個人でも、クラウドに依存すると割り切れば、ほとんどそうしたITの設備投資もいらなくなる。問題は自社サービスの開発のための予算だけである。たとえばAmazonクラウドなどに自社サービスを公開することになっても、年間のクラウドのインフラの維持費はたいしてかかるものではない。つまりネットの開発やサービス提供の予算は、PCやサーバー台数、サーバーソフト購入予算ではもはや測れないということである。


 したがって、メーカーやソフトベンダーが自社所有のサーバーやソフトの販売を伸ばそうとすることは、特殊な分野はともかくとして、クラウド時代に逆行していることになってしまう。使い回しの転用サーバーで、まず実験的に十分サービスを開発しておき、以前であれば新規サーバーを導入してサービスを提供という流れだったかもしれないが、今では実験的に開発したものはクラウド上の仮想サーバーとしてしまうことが可能である。自前のサーバーはせいぜい仮想サーバーのバックアップ用くらいの役割だろう。


 一方でグリーンITの提唱のように、サーバーを物理的に台数を減らし消費電力も管理業務も削減するという話もある。複数サーバーを事実上、統合して集中するのがブレードサーバーでもある。中小や個人であれば予算的に、この段階を飛ばしていきなりクラウドに走るということになる。


 自動車産業が一気に不況に落ち込んだが、今後はもはや同じような形に戻るわけでなく、エコカーなど世の中の需要に合ったもので業績回復を図っている。サーバーも同様で、従来のように高価なサーバーがシンボル的に導入される時代ではなくなっているだろう。Sunの業績悪化の顛末を見ればわかる。したがってPCサーバーが再び右肩上がりのグラフの伸びで上昇するのではなく、むしろサーバー台数の微減が続くくらいの方がクラウド化が進んでいることを示すことになるのではないだろうか。