温室効果ガス25%削減目標

 選挙が終わっても、特別国会の開催日の関係でなかなか新政権が発足しないが、マニフェストやら政策の内容にはいろいろと期待と不安もあるようだ。人事に関することは綱引きがあって進まないようだが、2020年までの温室効果ガス排出削減量目標が「90年比25%」という、やや衝撃的な方針が示された。今後とも、いろいろ物議を醸し出しそうである。

日本が変わる:鳩山・民主代表、温室効果ガス「25%削減」−「90年比」(毎日jp)

 福田政権のときは洞爺湖サミットの議長国ということもあって、リーダーシップを取りたい意味もあってか、日本発の提案は「2050年までに50%削減」というものだった。しかしあまりに先のことで世界の賛同は得られなかったようだ。当時から、いったい40年以上先のことをどうして今から約束などできるかのと不思議に思えた。そもそも提案した人たちで、2050年まで生きている人もどれだけいるのか。温室効果ガスCO2の問題は、近年クローズアップされてきて、今何ができるかが重要あって、誰も責任が取れない何十年も先のことを預言者のように宣言しても仕方がない。いかにも誰も責任を取らない役人的体質の提案ではないかと思えたのである。


 しかし今回の10年間で25%削減は、かなりリアルでシビアな提案といわざるをえない。鳩山政権はもちろん、民主党政権そのものも10年間続くかどうかはわからいが、10年間というのはかなり現実的な年数なのである。最近の10年早く前倒しになった国策としては何があったかといえば、それは光ファイバーの普及であろう。今では地域差はあるものの普通の存在になった。クリントン政権時代の「情報スーパーハイウェイ計画」に対抗してインターネットの普及に備えて光ファイバーを10年早く国内に敷設したのが、今に生きているようなものである。


 しかし温室効果ガス排出削減についてはどうか。普通に考えれば、あらゆる生産・消費、経済活動がCO2排出につながっているわけだから、これらを規制する話になりかねない。産業界の最大の懸念はここにある。環境保護ばかりでは、人間が生活できないことと同じである。そうであるから目標達成に至るには、あらゆる世の中の仕組みが変わっていかなければならないだろう。現在でも人によっては身の回りから、省エネが言われたときのようにケチケチ運動みたいなことを始めている向きもあるが(夜中に活動しているのもよくはないだろう)、その程度では数値的にも本質的な解決にはならないだろう。電気自動車やソーラー発電くらいでも喜んでいられない。大きな経済、社会構造から変わらなければ難しいことといえる。たとえばエネルギーをCO2排出量の大きい化石燃料である石油には依存しないようにするとかである。それには現状では、たとえば電力はより原子力に頼らなければならなくなるだろうということである。簡単に太陽エネルギーや風力で代替できるようなものではない。いろいろな科学技術の発展と実用化によって、徐々には代替は可能になっていくだろうが、それが10年以内にどこまで進められるかは、かなり厳しいスケジュールであると思える。また科学技術では可能になっても、それが社会で受け入れられるようになるまでには、また時間がかかるということもある。


 単に政治的なアドバルーンだとも思いたくはないが、いったいこうした科学技術や社会のしくみにも関係する大きな目標を考え出したり、提案するのはどういうレベルの人がやっているのだろうか、という疑問はある。少なくても鳩山次期首相のハッタリだけではないはずだから、誰がどういう根拠でそういう提案をしているのかということである。一部の受益者とか利益団体だけに関連する話ではないだけに、その可能と算定する根拠、方策を知りたいものである。