ネットブックの企業利用はまだまだ

 ネットブックWindows 7のことを書いたら、ちょうど似たような論点の記事があったので、しつこいようだがネットブックの今後について、もう少し論じてみよう。ネットブックの企業での利用はまだまだということだが、さてどうだろうか。

Netbook、企業での利用はまだまだ(ITmedia)
Microsoftは“怪物”Vistaを葬り去ろうとしている?(ITmedia)

 企業での利用といっても、いろいろな分野や規模があるわけで一概には論じられない。しかし大きな時代の流れというものは、次第にどの分野にも影響を及ぼしていく。それにどれだけのタイムラグがあるかである。インターネットとかIT化が問題にされたときでも、いち早く導入した組織もあれば時代を読めずに遅きに失したところもあっただろう。ネットブックの流れが、単にネットブックだけの変化でとらえるのは偏狭な見方だろう。


 ITの大きな流れでは、上はWeb2.0に続くクラウドの流れによるWebサービスの普及がある。下はインターネット端末としてのスマートフォンが普及してきたことである。ネットブックは近い将来のクラウドの端末として、スマートフォンの上位のクライアントとしての立場になるだろう。ところが現状の議論は、ネットブックが単に従来のデスクトップアプリのためのノートPCの安価な代替品としての評価にばかりウエイトがある。それでは価格面での有利さ以外は、既存のノートPCには劣るのは当然である。もしネットブックが既存のノートPCと同等のスペックを持てば使い物になるというのは当たり前のことである。ただそれが現実化するならば、既存ノートPC市場はネットブックに食われ、完全に潰れることになるだろう。現在でも超薄型ノートPC(記事の中ではウルトラポータブル)として、既存ノートPC側からネットブックに市場を近づけようとしているが、自ら首を絞めているようにも感じられる。実際、不況のせいかネットブックの影響のあってかは定かではないが、既存ノートPCも軒並み10万円を切り、標準スペックの機種で7〜8万円台が相場になっているのではないだろうか。


 既存ノートPCの代替になるだけネットブックのスペックが(価格がそのままで)上がることを待ち続けるのは、ちょっとおかしいだろう。最大の理由は、独自の業務アプリが動作するかどうかに縛られるからだという。独自アプリではないにしろ、Microsoft Officeが実用的なパフォーマンスで動作するようになるまで待つという発想である。しかしそれは近い将来的にもネットブックを使う姿ではない。どうしてもOfficeにこだわるのならば、Microsoftクラウドの一部になるであろうOffice Web Appsを使うのが筋である。それで機能的に足りないというならば、ファイルだけ読み込んで既存ノートPCやデスクトップ機でローカルのOfficeの作業をすればよいだけの話である。「まだまだ」と言っているのはネットブックのスペックというより、使う方の発想の方であろう。


 ネットブックの普及を妨げているのは、ある意味Windowsである。Vista開発時には、ネットブック市場が出現するとは予想もしていないことだった。またクラウドについてもそうである。急遽XPを延命させてネットブック市場を押さえようとしたが、既存のデスクトップやノートPCにはVistaを推進しながら、ネットブックにはXPをという歪んだマーケティングになってしまっている。それがXPからのアップグレードを考えている企業にとっては、現状ではいまひとつネットブックに乗り切れない理由にもなっているだろう。そこで早くWindows 7を出荷して、ネットブックも含めてすべてのWindowsを水平のラインアップにしたいはずである。であるからMicrosoftにとって、ネットブックでもWindows 7が快適に動作するというのは、至上課題になっているだろう。Vistaそのものが不評であったことはもちろんだが、ネットブックを含めて、早く足並みを揃えてクラウド(Windows Azure)に向かわせたいというのが本音かもしれない。しかしMicrosoftにとっても、ユーザ企業にとっても、デスクトップの資産がまだまだ足かせにもなっているのかもしれない。身軽なジャンルから先行して、クラウドネットブックの世界に移行していくのがよいと思うのだが。