ニュースサイトの有料化は難しい

 News Corpのメディア王マードック氏やNew York Timesが新聞のWebサイトを有料化する方針を示しているが、それに対してGoogleのCEOが否定的な見解をしている。紙メディアが衰退が言われる中、新聞コンテンツの有料化は成功するのか。

「ニュースサイトの有料化、難しい」とGoogle CEO(ITmedia)
新聞のWebサイトをすべて有料化に―メディア王のマードック氏(8.6)
メディア王マードック氏「敗北」 傘下の英無料紙、赤字で廃刊へ(MSN産経 8.22)

 もともとマードック氏はネット時代に対応して、むしろ新聞メディアも無料化を進めるという立場だったが、金融危機の影響から新聞広告が減少して、無料の新聞は赤字が増えるだけになったようである。背に腹は変えられないとばかりに、逆に新聞Webサイトもすべて有料化する方針に転換したようである。しかし、新聞Webサイトの有料化はネット初期の頃から検討はされてきたが、これまで実行はされてこなかった大きな問題である。そのうちに、ネットのニュースは無料が当たり前という常識が定着してしまったのである。


 影響力のあるマードック氏とはいえ、長年のマーケティングの結果からの有料化ではなく、経営的に追い込まれての方針転換だけに、世の中に受け入れられるかどうかは疑問のところだ。自らが先陣を切って、他の世界中の新聞が追随してくれれば、Webで新聞記事を読むのは有料が常識になるとの読みかもしれないが、果たしてそううまくいくだろうか。


 新聞が売れなくなったのは、Webでニュースが読めるようになったせいだといえば、一理はあるだろうが、だからといって今さらWebを有料化したからといって、紙の新聞が再び売れ出したり、有料Webサイトへの購読申込み件数が増えるとは、あまり思えない。GoogleのCEOが言うように一般記事では難しいだろう。新聞記事の内容といえば、ほぼ「事実」と「分析」と社説などの「意見(オピニオン)」に分けられるだろうか。このうち特に「事実」を知ることに対して制限をかけることはネット時代では意味をなさないだろう。ニュースを見る動機が「何があった」という事実だけを知りたいときに、アクセスしようとした先が有料でログインが必要だったりしたら、Googleなりで検索をかけて事実が公表されているサイトを探すことになるだろう。新聞とかマスコミ全体が一致して有料でなければ「事実」の情報が得られなくしたとしたら、それはある種の情報規制と同じになってしまう。


 「分析」や「意見」の部分は、より深くニュース内容を知りたい人は有料購読するだろうが、「事実」を求める人の中でその割合は限られるだろう。なぜなら、ネット上ではさまざまな立場での分析や意見を得ることができるからである。あるニュースへの意見にしても、権威ある新聞の社説などより、無名のブログの方がよほどまともな意見を見つけることができることもある。これもネット時代になって初めてわかったことでもある。有料購読の新聞では、あらゆる志向の読者を想定した無難な意見しか書けないのかもしれないが、しがらみのないネット記事の方が本音で核心を突いた内容が書けるからかもしれない。


 さてGoogleにとってはGoogleニュースなどは、新聞WebサイトへのリンクやRSSだけで成り立っている人のフンドシのようなものだから、これを有料化されると成り立たなくなることは明白である。だから有料化に否定的というわけでもないだろうが、世界の公の情報は公開されるべきとされるGoogleの理念からすれば、世の中一般のニュースは、当然公開情報であるべきだという考えなのだろう。ニッチな情報や専門分野の情報やデータは活用すればビジネスになりうるので、有料であっても必要とする人や企業は存在する。ただしそれはパイが限られたものである。